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日本では、安倍内閣が5月14日に閣議決定した安全保障関連法案(安全保障についての自衛隊等の軍事関連10法の改正とPKO関連の恒久1新法)を巡る報道が目立ちました。
野党から「戦争法案」と批難される法案を国会論戦も前にして早々に閣議決定したと糾弾された安倍首相は、「無責任なレッテル張り」「まったくの誤り」と得意の逆批判の野党攻撃を行っただけでなく、安倍政権はこれまで自ら使用していた「安全保障関連」の名称を変更して「平和安全法制」と5月からは呼称さえも変更する詭弁さえ実施して、国内世論対策に躍起です。まるで、戦前に戦争を事変と称し戦後も侵略を進出と言いつくろったような言葉のトリックも巧みです。戦争を平和と称するのです。
実際、国民向けには「戦闘に参加することは今後とも決してない」と日本の平和主義を変えない主旨を述べた安倍首相ですが、4月末のアメリカ議会では「戦後初めての大改革です。この夏までに、成就させます」と明確に平和主義を変えることを宣言していました。
安倍首相は、昨年7月に集団的自衛権について平和憲法を解釈改憲することを閣議決定して、自衛隊の武力行使について戦後に初めてその一線を超えましたが、その際には「憲法解釈の変更が必要と判断されれば、改正すべき法制の基本的方向を閣議決定していく」と述べていました。今回の「平和安全法制」とは、まさに、その基本的方向の法律整備であり、やはり安倍首相の目指すものは、言葉上では平和でも、実態的には、アベコベの軍事大国の道のようです。
日本メディアの報道は、一部に批判報道があるものの、大手の多くは南シナ海の緊張(中国の脅威)や北朝鮮のミサイルや核の脅威等を煽り、これを解決するために、「法制整備を進める」「軍事的な抑止力を高める」とも言う、安倍首相の主張に迎合し、それが戦争を前提にした軍事関連の整備法案にも係わらず、「平和主義は守る」と言う矛盾に満ちた安倍首相の詭弁を擁護しています。
(やはり、情報統制の効果でしょうか?4月報道では、テレビ朝日の報道ステーションについて、自民党は、昨年11月26日付で、11月24日の報道が「アベノミクス効果が大企業や富裕層のみに及び、それ以外の国民には及んでいないかのごとく断定する内容」だと批判した正式文書を出していたことが暴露されていましたが、一報道番組の内容に、こと細かく文書で報道統制しているのが、安陪政権の実態のようです。)
安倍政権の「平和安全法制」の閣議決定の最中、横浜では、日本国内では最初となる、軍事メーカの武器の展示会も開かれました。 (日本初の海洋の軍事防衛技術の国際展示会はパシフィコ横浜で13日〜15日開催)日本は戦争できる国となるだけではなく、戦争を広める道をも選択したかのようです。安倍政権は昨年4月、「武器輸出禁止三原則」さえも放棄したのです。(武器輸出三原則とは平和主義の一貫として、原則として武器および武器製造技術、武器への転用可能な物品の輸出を、かつて日本の歴代政府が自粛していたものです。)海でも離着陸が可能な海上自衛隊輸送機や最先端のレーザーレーダーなども展示されたそうです。そしてオーストラリアとインドには、軍事潜水艦を売るために官民一体で力を入れていると言われます。P
安倍首相の詭弁糾弾と言えば、韓国の国会は5月12日の本会議で、アメリカ議会演説で期待された「侵略の歴史と慰安婦に対する反省がなかった」として安倍首相を糾弾する決議案を全会一致で採択しました。安倍首相が「侵略と植民支配、慰安婦問題に言及せず、人身売買といった表現で問題の本質をごまかそうとしている」とその詭弁を強く非難し、靖国神社への参拝や集団的自衛権行使、竹島領有権の主張などを「非常識行動」としています。安倍首相を批判した決議案は、2013年12月の靖国神社参拝以来の2度目で、朴槿恵政権発足以来、国会の本会議で可決された安倍政権向けの糾弾決議は今回を含めて13件になりました。
ソウル汝矣島の国会で開かれた(臨時会)議で、日本安倍首相糾弾決議案(日 아베총리 규탄 결의안)は、在席238人の全員一致による決議でした。
一方で、翌日5月13日には、韓国の全国経済人連合会と日本の経済団体連合が、日韓国交正常化50周年を記念して、ソウルのロッテホテルで交流が図られました。その特別講演では、訪韓していた、姜尚中・前東京大学名誉教授が演説し、「歴史·領土問題と北東アジア安全保障·経済の問題を分離対応して、異論は残し、同じ点を追求する」と言う「韓日関係の志向」が主張されました。未来を担う若い世代の相互理解と協力を強調し「二つの社会の和解と友好を心から望んでいる」としていました。
韓国の政治家が安倍政権に反発する背景には、国際記念物遺跡協議会(ICOMOS)が日本の三菱造船所など朝鮮人5万7900人余りが強制徴用された場所も含む7つの明治維新の施設を世界文化遺産に登録するようにユネスコに勧告したこともあるのではないでしょうか。
また、アメリカで世界的に著名な歴史学者達が5月6日に日本の安倍首相に日本軍慰安婦問題と関連した歴史的事実を歪曲せずに正面から認めることを促す集団声明を発表したことも影響したのではないでしょうか。それは、2月5日のアメリカの歴史家20人の集団声明発表に続くもので、ビンガムトン大学、ウィリアム·パターソン大学、マサチューセッツ工科大学、ハーバード大学、シカゴ大学、スタンフォード大学などを先頭に、欧州やオーストラリアで活動中の歴史学者も含めて187人の学者達は、集団声明を発表しました。その理由の一つには、日本の外務省がアメリカの歴史教科書における「慰安婦」問題の記述に対して、アメリカ政府に修正要求をしたことに対してアメリカ市民感情の反発もあったと言われます。安倍政権の工作する、アメリカ世論への「圧力」は、逆に学問の自由への干渉の問題として批判を浴びてしまったようです。
韓国報道では、慰安婦問題への詭弁対応は、安倍首相が掲げた歴史修正主義の一環であり、 安倍首相は、2012年12月に2期めの内閣を発足させて、 防衛費を増やしただけでなく、文化外交を担当する日本外務省傘下の日本国際交流基金を、2013年の166億円から2014年に201億円にも増やしてアメリカ等での国際世論作りを行っているのではないかと邪推もしているようです。
そんな韓国ですが・・・日本も批判する資格があるかどうか疑問があると言う人もいます。韓国軍はイラク戦争に、最大時3600人、延べにすると2万人という軍を派兵しアメリカの要請に応じ、イギリスに次ぐ軍事貢献をしています。韓国軍はベトナム戦争にも参戦し延べ31万人以上を派兵し、5000人前後の死者を出しています。朝鮮戦争時には、韓国軍は約20万人の死者を出し一般市民も約200万が犠牲になり、多くの家族が未だに南北間で離れ離れになって暮らしています。しかし、隣国の日本は、アメリカ軍の基地を演じはしましたが、実は韓国民の血の犠牲を背にして、平和に戦後に経済復興して来たのも事実です。その民族的犠牲は戦前の強制労働だけではなかったのです・・・。
汝矣島と言えば、KBSホールで5月15日に「光復70周年を迎え、大韓民国国民が一つになって楽しもう」というフェスティバルの主題歌となる「私たちが会う日」のミュージックビデオ撮影現場が有名芸能人も参加して報道されました。
独立70周年を迎える光復節(2015年8月15日)に韓国の国民が一つになって、盛り上がろうというフェスティバルです。毎晩10時55分に放送されるKBS 1TVの報道や、SNS、インターネット、テレビなどで5月から8月まで3ヶ月間様々にイベントもある予定で、最高のフェスティバルとして期待されている大合唱の主題歌が「私たちが会う日」となっています。8月15日には、ソウルのワールドカップ会場で韓国市民7万人の大合唱が予定されています。
中国関連報道では、北京市人民検察院は5月15日、人権派弁護士、浦志強氏を騒動挑発などの罪で北京市第2中級人民法院に起訴したそうです。 浦氏は、日本政府は中国政府に対して「領土問題や南京虐殺の有無といった歴史問題でなく、今の中国政府が新公民運動のような人権運動を弾圧していることを強く批判すべきだ」「日本政府はそれができる立場にある」とも語っていましたが。安倍政権は、何故かアメリカのような、人権擁護外交は実施せずに、尖閣をめぐる軍事的脅威を宣伝することばかりに熱心な様子です。また、ニューヨークで開催された核兵器不拡散条約(NPT)の再検討会議では、日本委員が各国指導者の広島・長崎訪問を呼びかけたのに反発した中国委員が「日本が第2次大戦の被害者であるかのように歴史を歪めることになる」との主張を行い、広島・長崎への訪問案が改定版から削除される事態が発生しました。5月13日の定例会見で、「中国の指導者は広島、長崎を訪れるのか」と日本メディアから問われた華報道官は、「それを聞くなら、「日本の首相はいつ南京大虐殺記念館に来るのだ」とあなたに聞きたいと返答したそうです。平和外交とは、軍事力や経済力を背景に競うものでもなく、本来は、そういった国家間の認識のズレや意見の相違や摩擦を解決するための根回しこそが中心であると思われるのですが・・・・。