中国の飛行機が、南京入城日の12月13日に、日本の尖閣領空を侵犯したニュースが、日本の報道では話題となっています。
アメリカの民間シンクタンク「国際評価戦略センター」は、産経新聞とのインタビューで、中国側による尖閣統治の誇示を狙った本格的な挑戦の開始であり、日本が反撃の行動を取らないと尖閣放棄にもつながるという見解を表明しました。
「日本側が何もしなければ、尖閣の主権も施政権も中国側に奪われたとの印象が生まれ、中国は沖縄取得までを目標とする大規模な領土拡大のキャンペーンを推進することになる」としています。
そして、自民党の安倍総裁は、日本に「国防軍」を新設し、いよいよ日本が戦争できる準備を明確に公約化しています。
日本での報道は、対話を勧めるのではなく、何故か基本的に全ての報道が、軍事対立路線を煽っているようです。そして、それに政治が追随していくという状況です。これが、日本の右傾化の正体なのでしょうか?。
東シナ海の日中の中間線を越えて日本領空に接近する中国機は最近多く、平成23年度の航空自衛隊の戦闘機の中国機への緊急発進は前年度比60回増の156回となり、尖閣対立の影響で増加の一方となっているそうです。
しかし、日本の自衛隊のレーダーは、今回の尖閣領空侵犯をキャッチすることができませんでした。海上保安庁の巡視船が発見し、防衛省に連絡したのです。尖閣諸島は、航空自衛隊のレーダーサイトがある沖縄県宮古島から200キロ、久米島から300キロ、沖縄本島からも400キロ離れ、どのレーダーからも遠く、いわばエアポケットのようになっていて、日本の自衛隊レーダーでは、中国の領空侵犯をキャッチできていなかったという事実が今になって判明したそうです。
日本は無線で中国機に「領空侵犯しないよう飛行せよ」と通告し、中国機は「ここは中国の領空だ」と回答したそうです。中国外務省側は「中国固有の領土の周辺を中国の航空機が飛行することは『完全正常』(当然の行動)だ」としており領空侵犯の意識もありません。
環球時報は12月14日付の社説で、尖閣諸島領空侵犯について「海空両面からの巡航の常態化に向けたスタート」だと主張,
さらに日本がF15戦闘機を緊急発進させたことに対して「中国にも同様の権利がある」とし、中国側も戦闘機発進を辞さないと強硬姿勢をあらわに報道しました。
一方、日本の外務省は、アメリカのヌーランド報道官が、中国の領空侵犯の日本側の「懸念」について、意見表明もしなかったことについて抗議し、その経緯をアメリカ当局に照会し、アメリカに明確な対応を中国に取るよう迫りました。その結果、アメリカ政府は中国政府に対し「懸念」を表明し、尖閣諸島は日米安全保障条約の適用対象であると従来からの見解を改めて伝えたそうです。
しかし、中国外務省は12月14日、東シナ海で自国領海の基線から200カイリを超える海域への大陸棚の延伸を求める申請書を、国連の大陸棚限界委員会に正式に提出したと発表しました。海底資源の開発権が中国に認められる大陸棚が、沖縄県・尖閣諸島を含む沖縄トラフ(海溝)まで広がっていると主張しています
中国は東シナ海では、2000年代に白樺鉱区(中国名・春暁)における開発を開始しますが、日本政府は同地域におけるガス田が中間線にまたがって存在していると主張し対立していました。東シナ海では日中間の大陸棚や排他的経済水域(EEZ)の境界は画定していません。日本政府は国連海洋法条約の関連規定と新しい国際判例に基づいて等距離・中間線原則をもとにした排他的経済水域(EEZ)を主張しています。しかし、2008年に日中両国は同地域における共同開発に合意をして、一応、日中間は妥協したはずです。しかし、日中関係の悪化でこの妥協さえも形骸化してしまったのでしょうか。
日本では、各メディアの情勢調査で、自民が圧勝すると予想されます。
しかし、日本では、何が争点かもあいまいにされ、日本の多くの有権者はマニフェスト違反の民主党に政権交代の幻想を破綻させられたことから、自民が今や国防軍を掲げるネトウヨ顔負けの政策に変わっているにも関わらず、自民の政治に回帰するようです。
安倍総裁夫人は、10月に女性週刊誌で「韓流ドラマはもう見ていない」とも明かしたそうです。かつては「冬のソナタ好き」を公言しており、韓国語でブログを書くなど韓流文化に傾倒していた総裁婦人も、すっかり変わったことさえ宣伝されています。
また、福島がもう忘れ去られたかのように、原発政策も随分変わりました。維新の会は当初は原発ゼロと言っていましたが、石原慎太郎氏が代表になると原発を『維持する』と180度変わりました。そして「卒原発」を掲げた日本未来が登場しましたが、日本の原発の是非に向けて、「卒?」「脱原発」などと様々な主張が飛び交い、かえって争点があいまいになってぼかされてしまいました。
自民は、いち早く原発再稼働を「順次判断」と称して、すぐに原発廃止の判断をしないことを公約に明確に掲げました。しかし、自民の安倍総裁が原発推進の主張者であることについて、意外にも国民は理解も浸透もまだしていません。
「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立を目指す」との目標を盛り込んだ一方、全ての原発について「再稼働の可否を3年以内の結論を目指す」とした「順次判断」は詭弁のようです。安倍総裁は「安全が確認され次第、再稼働させるべき原発は再稼働させていく。その批判を受け止める覚悟がある」(11月12日、福岡市の講演)として、可能な原発から再稼動を強行することを有権者に約束さえしています。
今年9月22日「東京新聞」の一面の記事には、「閣議決定回避 米が要求」とスクープ記事がありました。「2030年代に原発ゼロめざす」の政府の閣議決定が見送られるなど、この間の政府の不可解なエネルギー環境戦略の「揺れ」の背景に、アメリカからの圧力があったことを報道しました。
アメリカ政府の日本への再稼動要求の根拠としては、「日本の核技術の衰退は、米国の原子力産業にも悪影響を与える」というもので、アメリカ「国益」にも反するというものでした。アメリカは、日本に原発再稼働を要求し、政府が実際困惑し、結果として政権与党は政策破綻したようです。
本来、日本の原発推進は、アメリカの原子力政策の影響下にありました。日本の原発技術の基本は、全てアメリカの技術支援です。アメリカ支援の歴史は古く、第五福竜丸の被爆の翌年1955年に日米原子力協定が仮調印されています。 (日本側が第五福竜丸事件を不問にする見返りに、アメリカは原発技術提供をしたともいわれています。)
日米原子力協定により、現在も濃縮ウランのアメリカ以外の供給を3割に制限され、日米原子力協定がある以上、日本は未来永劫、原発燃料の7割以上を、アメリカから輸入しなければならない義務さえあります。全てはアメリカの国益だったのです。
もうトリウム原発や天然ガスにも切り替えたい、アメリカはウラン在庫を日本に押し付けたいのだ、日本民族は悪魔との契約をさせられたとまで言う人もいます。
その一方で、今年、アメリカはカリフォルニア州にあるサンオノフレ原発2、3号機が 故障し1月から停止したままです。日本の福島の事故を教訓とした住民反対運動がカルフォルニアで発生し、再稼動の目処もついていません。しかも、アメリカの電力会社は、原発の故障原因について「蒸気発生器を製造した三菱重工業の設計に問題があった」としており、日本企業を全面的な悪者にしたてて、全ての責任と損害賠償を求めているそうです。
安倍総裁が原発再稼働の「順次判断」を公約に掲げたことについて、このアメリカの国益である原発再稼動の要求を自民が受け入れ、今後推進することで、政権に返り咲く条件を満たしたのだと見る人さえいます。
また、かつての安倍政権では、自民政権下で派遣労働法の制定と構造改革で終身雇用制が崩壊して、不安定な生活を余儀なくされて年齢を重ねるワーキングプアの若者が増加し続けるという日本社会の現状があり、その対策として再チャレンジの可能な社会を実現すると称して国務大臣の特命職務の一つとして通称「再チャレンジ担当大臣」なるものまで新設されました。しかし、ワーキングプアの若者は、再チャレンジどころか、益々増え続けてきました。皮肉なことに、今回、安倍総裁が自ら政権に返り咲くことでしか、稀少な再チャレンジの成功例も示すことができなかったのだろうと言う人もいます。