犯罪大国

　日本では、ジャ・ジャンクー監督の「罪の手ざわり」(天注定)（A Touch of Sin）が先月３１日公開されましたが、「現代中国の歪み」「悪が栄える中国の現実」等と映画の賞賛は、六四事件２５周年も前にして、現代中国批判に繋がる批評が多かったのが気になりました。(長江哀歌でヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞したジャ・ジャンクー監督の6年ぶりの作品で、昨年第66回カンヌ国際映画祭の脚本賞を受賞。既にフランス、アメリカ、台湾等で公開されており、スティーブン・スピルバーグ監督をはじめ、世界中で絶賛されているそうです。)

　「中国版ツイッター『微博（ウェイボー）』などで突発的な暴力事件の多さを知ったことがきっかけです」と監督は述べて、実際に起きた殺人や自殺など四つの事件を元に、底辺の民衆の不満や鬱屈の発現が暴力となって爆発するような、従来のリアリズム作風に社会告発も加わっているようだと言う人もいるようです。

　１番目の事件は、山西省のある村の共同財産だった炭坑の利益が、富裕層の実業家に独占されてしまったことに怒った炭坑労働者（大海・ダーハイ）が起こした事件で自家用ジェット機を所有する、富裕層の実業家は正義を主張する労働者に猟銃で射殺されました。２番目の事件は、重慶の農民工で妻と子には「出稼ぎ」と嘘をついて、各地で強盗殺人を繰りかえし銃声を聞くことにロマンを感じる寡黙で孤独なさすらいの男（周・チョウ）の事件で銀行で金をおろした富裕層婦人は路上で射殺されました。３番目の事件は、湖北省で単身赴任中の妻子ある不倫の男との恋に悩みながら、サウナで受付嬢として働いていた女(小玉・シャオユー)が客から札束で風俗強要のセクハラを受けたことに逆上した事件で金で貞操を奪おうとして女を侮辱した男はナイフで刺殺されました。４番目は、縫製工場の仕事を辞めて、広東省・東莞の性風俗の街のナイトクラブで働いて母親に仕送りする、若者（小輝・シャオホイ）がホステスに恋をした哀しい話で、若者はもはや風俗の性暴力装置に依存するしか生活も成り立たない現実社会に殺されたというべきなのでしょうか?。

　それぞれの物語に合わせて中国北部の寒く広大な農業地帯・山西省から、南西部の揚子江沿いの重慶、中央部の湖北省から南部の海岸沿いの亜熱帯地域・広東省の東莞と映像は流れ、北京や上海の繁栄とはまた違った、中国の素朴な社会風景も描かれているようです。

 

「最初の山西省の事件は、社会が生んだ暴力。司法・法律的な暴力です。みんなが取り合ってくれない、自分の行動を阻害される。そういった社会から生まれた事件です。２番目の事件は、個人に根ざした暴力です。地方の窒息しそうな閉ざされた社会。そこに暮らしていても、生き生き暮らせない精神的な困難や、さみしさ。強盗や殺人を犯しますが、わりと個人に根ざした暴力です」「３番目の女性のストーリーは、一言でいうなら『尊厳』の問題。人間としての尊厳を傷つけられ、生きていく価値を守ろうとしたときに、自分が受けた暴力に対して、暴力が出てしまった。4番目は、隠された暴力。工場やナイトクラブの給料はどうなっているのか、誰が家族の家計を支えているのか。直接的ではない、隠された側面がありました。」と監督は述べているそうです。

　全て現代中国の実話から採ったリアリズムに加え、虎に変身する男や蛇に変身する女が、獣のような人間達に復讐、馬や牛のように寡黙な民衆が祝福する、武侠的な社会批判的な映画と評する人もいるようです。

しかし「人間の歴史は暴力の歴史」だとのメッセイジは、現代中国と同様に少し病んだ認識のようにも思われます。P

　確かに、新疆ウイグル自治区では、2009年に区都ウルムチ等で発生した民族対立の暴動により多数の死傷者を出しました。その後もカシュガル市における無差別殺傷事件（2011年7月）ホータン地区で暴徒が人質２名を取って立てこもる事案（2011年12月）（警察官が１名死亡。）カシュガル地区でナイフを所持した暴徒の襲撃により15名が死亡する事案（2012年2月）ホータン発ウルムチ行き旅客機のハイジャック未遂事件（同年6月）カシュガルで東トルキスタン独立運動によるものとみられるテロ事案（2013年4月）が継続しており、トルファン地区で暴徒により24名が殺害される事案（2013年6月）等が発生し、(2013年10月)首都・北京の天安門で自動車による自爆テロが発生し40人超が死傷したのを皮切りに、2013年11月と12月にもカシュガル地区で、ウイグル族住民が派出所を衝撃。2014年3月1日には、ついに雲南省昆明市の昆明駅で刃物をもった男女数人が居合わせた地元住民らを殺傷し、29人が死亡し140人以上が負傷する大惨事にいたりました。今年、4月30日と5月22日にもウルムチでは、爆弾テロで多数の死傷者が出ているそうです。しかし、これらの暴力の理由が仮に民族独立であっても、格差と貧困に怒る民衆の正義であっても、当局の横暴な弾圧の暴力の歴史と同様に、それも本来、人間が目指すべき和平の歴史ではありません。　昨今のチベット僧のもう１３０名を超えるとも言われる焼身自殺なども絶望のメッセイジの手段としては当局のやり方と同様に病んでいます。弾圧からも憎しみの連鎖の正義を主張する犯罪からも、平穏な生活や安全な社会は生まれません。

 

　犯罪と言えば、日本では、大阪市西成区の准看護師・岡田里香さん殺害事件で、岡田さん名­義のパスポートで中国・上海に渡っていた日系ブラジル人の大石ゆり容疑者（29）が上海で身柄を確­保されたと大報道をしていましたが、先般日本の警察は、岡田さんの遺体が入っていた荷物から、大石ゆり容疑者の指紋が検出されたことなど、一連の捜査の結果、遺体の遺棄にも関わった疑いが強いと判断し、従来の旅券法違反容疑に加えて、死体遺棄の疑いでも逮捕状を取ったと報道されました。(日本の報道を受けて中国内での報道もありました。)

　

 真偽は不明ですが、大石ゆり容疑者は日本でイジメにあい？（もしかして、イジメの復讐?)中卒後ブラジルへ帰国していたとも、奈良県を拠点としていた日系ブラジル人の広域窃盗団の構成員との関りもあり、複数の前歴もある?とも言われているようですが、Wカップサッカー開催に向けて大きく報道されているように、日系移民が多く、親日国家のブラジルですが、現在のブラジル社会は、世界一とも言われる銃撃事件数を初め、強盗事件が多発する犯罪大国になっているようです。その社会背景には、中国同様に極端な貧富の格差があるようです。P

　

ブラジルの強盗が日本の３１５倍は脅威です。ちなみに、２０１２年統計で韓国での殺人事件数は人口当たりで日本の約2.4倍、強盗は日本の１．８倍、強姦・わいせつ事件は日本の約5.8倍とされています。(一時日本のマスコミが、韓国の強姦が日本の40倍としたのは、意図的ではなく、統計のミスであったことが判明しています。)

中国当局は近年、国内犯罪が大幅に先進国並みに下がったとしていますが、当局の統計は実際のところは良く分かりません。

国連データの発表では、2009年10万人あたり中国の殺人発生率は1.1人で、当時の日本が0.4人で日本の２．７５倍でした(２００９年のイギリスの1.2人やアメリカの5.0人より、もう低くなったことは事実のようです。)

中国の殺人事件の数は1981年の10,000件から、2000年には28,000以上まで大幅に上がりましたが、当局の取り締まり強化で減少に向かい２０１１年は12,000件まで下がったとされ、強盗は2002年から以来40%以上下がり、強姦も2001年をピークに18%下がり、銃関連の犯罪は、2000年の5,000件から、２０１１年に500件にまで減少、テロなどの爆破事件も２０００年の4,000件から200件まで下がったとされています。大幅に増えたといわれる軍事費をさらに上回る国内の公安費で、国内犯罪を封じ込めているのが実態のようです。(中国の公安費は2010年以降、膨張を続ける国防費さえも上回り、2012年予算では公安費が7018億元（約9兆1000億円）、軍事費が6703億元（約8兆7000億円）となっています。国内警察費用が軍事費を上回ると言う点では、世界的にも特異な国で、世界最大の警察大国と言うべきですが、それは裏を返せば潜在的な犯罪大国であることの証明でもあります。)

 

大石容疑者が都内でルームシェアした際に頼ったのが大阪西成にあるコンビニのバイトで知り合った中国留学生で、彼女は北京出身で２００８年に来日し、関西で約２年間過ごした後、２０１１年４月から東京の国立大学院生になったそうです。かつて大石容疑者は西成の実家に中国留学生を連れて行き 『この子と一緒に住むから』と親に言い残し上京、以来家族とも音信不通になったとも報道されています。ブラジルの女性は早熟で情熱的で開放的なことでも有名です。今回の事件は、大石容疑者の単独犯説とみられていますが、上海で二人が手をつないで歩いている姿を、何故か日本のテレビ局が捉えて報じています（二人を追って取材していたようです。しかし、大石容疑者は5月3日に上海に入ったあと、上海市内にある集合住宅に滞在していたらしく上海では同居を前提にしていなかったようです。)確かに多くの謎に満ちた事件ですが、大石容疑者の同居人であった元中国留学生との親密な様子やプライバシーさえ侵害した報道(支媛さん?陳さん?ネットで顔写真さえも出されていますが・・）がされているのも気になるところです。P

日本の国立大学院卒業の日系企業で働く中国元留学生のツイッターは、大変真面目な内容のようです。都市計画で博士号を取得したまじめな院生で、アルバイトでは中国語講師もしていた?との報道もあり、それも大変気になるところですが・・。（>.<）

「(２匹のプードル犬の)心結（ここ）と羽海（うみ）とひっそり暮らしています(^-^)わんずのことや出来事などをつぶやいていきます・・」との記載で始まり、「ホルトガル語なう」とかブラジル料理を食べた記載もありますが、大石容疑者について触れたコメントは見当たらないようです。犬を好きな人に悪い人は、そんなにいないとも思います・・・。(そうでしょうか? 2匹の子犬は上海に連れていったのでしょうか?。子犬の書き込みが昨年止まっています。もしかして、大石容疑者が、子犬代わりの癒しの存在になってしまったのでしょうか?.P） 

バカな・・中止妄想！・・単に同居人の事件に巻き込まれただけではないでしょうか?5月２３日に上海の日系企業に欠勤届を出したとも報道されています。日本のマスコミの犯罪解明の好奇のいやらしい取材姿勢が、とんでもない人権侵害さえ犯しているのではないでしょうか?　。女子が手を繫ぐのは若者の一種の流行のようなふざけたものでしょう?。留学生がルームシェアをするのも、ごく一般的な行為で、日本のマスコミは興味本位で、同居についてデタラメな報道をしていますが、同性愛者は１９９７年まで「犯罪者」であり、２００１年までは「精神疾患」として中国では認定されています。4月にその種の二次創作小説をネット上に興味本位で投稿した若い女性たち約２０名が逮捕されたと言う報道さえありました。

(デタラメではなく、日本のは綿密な取材です。確かに妄想的な報道かもしれませんが・・。尾行盗撮などマナー違反の取材も・・・内容もセクハラ報道とも言われれば、・・そうかもしれません。)(>.<)

（日本も最近は、優秀な若者が、自暴自虐の犯罪に走るケースが増えているそうです。やはり格差社会となった弊害でしょうか?. 動機も不明で無差別に他人を傷つける犯罪を犯す若者が増えてきたことの背景とは、かつての終身雇用と平等の美徳を放棄した日本では、自分の将来の見えない閉塞的な生活状況が発生しており、若者が連帯意思も放棄し自己の境遇や孤独に絶望しやすくなったということなのでしょうか?.　

やはり、格差のなかで、自己のプライドを大きく傷つけられ、誰にも認められず、誰からも愛されていないと、もがく若者は中国と同様で、日本でも増えているようです。しかし、他人と比較することでしか、他人を否定することでしか満足を得れないような、そんな屈折したプライドなどは、もう捨ててしまえばいいのですが・・。社会の変化にも合わせて、見返りなどを求めず、誰かを認めて、誰かを愛するだけでも、人間は地位も名誉も金がなくても、自分の誇りや幸せを手にすることは、十分にできるはずなのですが・・。)

 

 

消されていない大石容疑者の同居人・元留学生のツイッター

(2011.3.11地震でも帰国せず学業に真面目に励んだ様子です。)

 

(しかし、上海での二人の会話後に落ち込んで、日本大使館に突然、大石容疑者が出頭したのは、謎と言われています。もしかして、大石容疑者は中国に帰国した彼女を慕って上海にまで追いかけて、ビザを手に入れるため自分は犯行にまで及んだのに、結局、彼女に受け入れられなかったため絶望して出頭したのではないかとも言われています。P)

単に、自首を説得されて諭されたから、大石容疑者は落ち込んだだけではないでしょうか?。元留学生が出頭を説得したのなら、むしろ褒められるべき行為です。(日本大使館を通せば、適法に保護されるとも考えたのではないでしょうか?。中国では、外国人でも重罪には死刑判決が出る可能性があります。ブラジル国籍に基づき強制送還されれば、ブラジルの法治下での裁きです。ブラジルでは軍部の重大犯罪を除き、１979年に死刑は廃止されています。）

（単に日本語が通じるので日本大使館に出頭しただけでしょう？.　しかし、最近、中国に限らず、現実の犯罪が映画や小説のフィクションの世界をもう超越した事件がやたら多いのは何故でしょうか？)

 

ブラジル娘(ヤスミン・山下)の日本語ローズ

海外移住の極めて少ない日本民族ですが、ブラジルは世界最大の日本人の移住地で、もう１００年以上前から日系移民の歴史があります。現在約160万人（人口比0.8%）の日系人が住むといわれ、ジャガイモ、レタス、トマト等、現在のブラジルの主要な農産物や果物の多くは日系人が持ち込み栽培に成功したものです。ブラジルでは、中国起源のキウイフルーツも日本の由来の果物とされているそうです。