心から愛した趣味。
皆さんは「TVRO」と言う趣味をご存じだろうか。
これは「テレビジョンレシーブオンリー(ただテレビを見る人)」の頭文字をとったものである。
事の始まりは、1980年、西側諸国がボイコットした、モスクワオリンピックを、アメリカでどのようにしたら見られるかと言うところにあった。
その結果、通信衛星を傍受すれば良いと言うことになり、アメリカの家々では、裏庭に大きなパラボラアンテナをたて、衛星の傍受が始まったと言う。
これが「TVRO」の始まりと言われている。
この趣味はその後市民権を得て、各国にもひろがり、自国にいながら、他国の衛星を通じてその国の文化等を享受できるようになった。
赤道上空3万6000㎞には、各国の衛星が静止衛星として、ひしめき合っている。
今までブログでは触れていなかったが、私もTVROを趣味としてきた。
自宅のベランダに、2m近い大型パラボラアンテナを設置し、そのアンテナが回転して、各国の衛星追尾し受信していた。
目的は、ワールドミュージックが好きな私が、現地から「生」の音楽を聴いてみたいと思ったからだ。
当時受信できるチャンネルはスクランブル(有料放送)を含め、2000チャンネル以上あった。
ウエブや、チャンネルのザッピングで、音楽番組を見つけては、それをチューナーから直接USBメモリなどに録画し、それをPCに入れ、動画編集ソフトを使い、コマーシャルカットをして、DVD等に焼く。
これが楽しくて、夢中になり、この趣味にのめり込んだ。
海外の衛星放送では、ラジオのチャンネルもあり、殆どが音楽番組であったので、それも大いに楽しんだ。
これにより、私の趣味「ワールドミュージック」の幅も広がった。
オーディオと並ぶ趣味で、かけがえのないものであった。
しかし、その趣味が突然終焉を迎えることとなった。
それは2016年10月。携帯電話会社が「4G」と言われる通信を始めたからだ。
4Gに使用されている周波数は、私が受信している周波数と同じ帯域を利用している。
更に強力な電波なので、直接地上波として、アンテナの電波受信部に直接飛び込んでくる。
こうなると、受信機側のフロントエンドが飽和してしまい、目的の電波を判別できなくなる。つまり受信不能となるのだ。
このような問題が起きることを想定していた携帯電話会社は、この問題の相談窓口をもうけている。
私は「ドコモ」の相談窓口へ連絡したが、全く解決には至らなかった。
これが「5G」の時代になると、もっと厳しくなり、海外衛星放送の周波数帯域は全て混信を受けることになる。
私はしようがなく、泣く泣くアンテナを取り外すことにした。
個人の趣味が国家に妨害された瞬間である。
今は、昔撮りためたDVD等を暇を見つけては、虚しい心で観る日々である。
約20年間続けた趣味。それをこんなことで失うとは思わなかった。
通信の発達の裏には、このような実態があることを、皆様に伝えておきたかった。
日本では、少数派の趣味である「TVRO」しかしその素晴らしさは、経験した者ではないと分からないと思う。
重ね重ね無念、残念である。