東北朝日岳に登り黒俣沢を下る
大朝日岳の東面より発する沢は2つあって、東に向かって左が黒俣で、右が朝日俣である。
距離は黒俣が短い。
大朝日岳よりの降り口の急崖はどうも朝日俣の方が、雪の裂罅(れっか)があり、急峻でちと危ない。黒俣も上は朝日俣とは違わない程だったが、下までずっと雪渓が見えて雪渓まで降りれば、あとは楽だと思った。
頂上に立って先ず思うままに自分の前に展開された山々を眺めた。
悠然とした大きな飯豊の姿が先ず最初に眼についた。
僕はこの大朝日に立って周囲を見渡して、見える限りはただ鬱々真っ黒な深林に蔽われた山々のみで、その深林の間の深い谷と云い、沢と云うものは皆、恐ろしい険悪な侵食された、人間の通れぬ谷ばかりで人間の居住する地はその間に一寸もないのかと思うと、峻厳な高山の恐ろしい絶壁などの容貌が僕に迫る威嚇よりもなお一層の威嚇がこれらの山々のあの深林の黒い襞のうちに深く蔵されているように感じた。
西朝日岳より以東岳の三角塔の如き山嶺まで長大な山陵が雪と這松のただ領有する所となっているのを見て、僕はまた非常にあの山陵を縦走してみたいと云うような考えを起こした。
甘納豆を食いつつどうするかを考えてみた。
先ず食料は握り飯2食分、菓子と鰹節もある。
黒俣沢は夏は悪くて中々通れず、魚止めの滝などと云うのがあって岩魚も居なくて岩魚釣りもゆかないが朝日俣沢は滝などは1つもなく奥まで河原伝いで行け、登り切る処が少し悪い切りだということであった。
少しも眠らずに焚火を燃やすことを仕事にして夜を明かした。
彼は自らを白馬尻の狢を称し、飯などは40年も食い続けてきたから1日や2日は食わずもいいなどと豪語している愉快な奴である。
人通りの殆んどない糸魚川街道を北へと進む。
冬の間この街道はただ運輸機関としては馬橇だけしかない。
その馬橇の馬糞は街道の雪の上に堆く積もっている。
そしてまた終いに輝かしい山々の接空線が一度ちらっと炎のように燃え上がって消えた。
その夕映えの最後の痙攣!
のし仰ぐばかり基底から削ったようにそそり立つ赤沢の壮大な岩壁。
槍沢はたしかに素晴らしく大きな景観だ。
平原の上に聳ゆる山;西ヌプカウシヌプリ
東西の双子峰のひとつ西ヌプカシヌプリ
ヌプカウシヌプリーーそれはアイヌ語の山名にて、「平原の上に聳ゆる山」
然別湖;しかりべつこ
その西ヌプカウシヌプリの頂よりの展望ーー
それはこれまで私のいまだそのたぐいをみないほど広やかで、そしておおらかなものであった。
この頂はその高さ、わずかに1200m余であったけれど、全山ほとんど草山。
ウペペサンケヌプリとは「雪水を流す山」
シイシカリベツ川
然別湖は実に感じの暗い山湖だと私は思った。
どうせ山のなかの湖だから明るいものは少ないが、北海道の山湖のうちではこれが一番陰気だ。
ペトウトルは非常に顕著な山容の頂だった。
荒船山と神津牧場付近
荒船という山を妙義山からみて、ほんとに陸上の朽ちた船のような面白い形の山だと思っていた
星尾峠
内山峠
初谷鉱泉は谷あいのごく小さな鉱泉宿で、湯宿もたった一軒しかない。
ことに内山峠へ向かって、あの平らな頂上の突角が突如直角に落ちて、ほんとに船の舳のようになっているところをみると、たしかに荒船という名のふさわしいことを知る。
とにかく荒船は、たびたび登りたい頂だ。
瑞牆山
大部分は極めて急峻にしてががたる花崗岩の怪奇なる形状の岩峰の集合。
大朝日岳の東面より発する沢は2つあって、東に向かって左が黒俣で、右が朝日俣である。
距離は黒俣が短い。
大朝日岳よりの降り口の急崖はどうも朝日俣の方が、雪の裂罅(れっか)があり、急峻でちと危ない。黒俣も上は朝日俣とは違わない程だったが、下までずっと雪渓が見えて雪渓まで降りれば、あとは楽だと思った。
頂上に立って先ず思うままに自分の前に展開された山々を眺めた。
悠然とした大きな飯豊の姿が先ず最初に眼についた。
僕はこの大朝日に立って周囲を見渡して、見える限りはただ鬱々真っ黒な深林に蔽われた山々のみで、その深林の間の深い谷と云い、沢と云うものは皆、恐ろしい険悪な侵食された、人間の通れぬ谷ばかりで人間の居住する地はその間に一寸もないのかと思うと、峻厳な高山の恐ろしい絶壁などの容貌が僕に迫る威嚇よりもなお一層の威嚇がこれらの山々のあの深林の黒い襞のうちに深く蔵されているように感じた。
西朝日岳より以東岳の三角塔の如き山嶺まで長大な山陵が雪と這松のただ領有する所となっているのを見て、僕はまた非常にあの山陵を縦走してみたいと云うような考えを起こした。
甘納豆を食いつつどうするかを考えてみた。
先ず食料は握り飯2食分、菓子と鰹節もある。
黒俣沢は夏は悪くて中々通れず、魚止めの滝などと云うのがあって岩魚も居なくて岩魚釣りもゆかないが朝日俣沢は滝などは1つもなく奥まで河原伝いで行け、登り切る処が少し悪い切りだということであった。
少しも眠らずに焚火を燃やすことを仕事にして夜を明かした。
彼は自らを白馬尻の狢を称し、飯などは40年も食い続けてきたから1日や2日は食わずもいいなどと豪語している愉快な奴である。
人通りの殆んどない糸魚川街道を北へと進む。
冬の間この街道はただ運輸機関としては馬橇だけしかない。
その馬橇の馬糞は街道の雪の上に堆く積もっている。
そしてまた終いに輝かしい山々の接空線が一度ちらっと炎のように燃え上がって消えた。
その夕映えの最後の痙攣!
のし仰ぐばかり基底から削ったようにそそり立つ赤沢の壮大な岩壁。
槍沢はたしかに素晴らしく大きな景観だ。
平原の上に聳ゆる山;西ヌプカウシヌプリ
東西の双子峰のひとつ西ヌプカシヌプリ
ヌプカウシヌプリーーそれはアイヌ語の山名にて、「平原の上に聳ゆる山」
然別湖;しかりべつこ
その西ヌプカウシヌプリの頂よりの展望ーー
それはこれまで私のいまだそのたぐいをみないほど広やかで、そしておおらかなものであった。
この頂はその高さ、わずかに1200m余であったけれど、全山ほとんど草山。
ウペペサンケヌプリとは「雪水を流す山」
シイシカリベツ川
然別湖は実に感じの暗い山湖だと私は思った。
どうせ山のなかの湖だから明るいものは少ないが、北海道の山湖のうちではこれが一番陰気だ。
ペトウトルは非常に顕著な山容の頂だった。
荒船山と神津牧場付近
荒船という山を妙義山からみて、ほんとに陸上の朽ちた船のような面白い形の山だと思っていた
星尾峠
内山峠
初谷鉱泉は谷あいのごく小さな鉱泉宿で、湯宿もたった一軒しかない。
ことに内山峠へ向かって、あの平らな頂上の突角が突如直角に落ちて、ほんとに船の舳のようになっているところをみると、たしかに荒船という名のふさわしいことを知る。
とにかく荒船は、たびたび登りたい頂だ。
瑞牆山
大部分は極めて急峻にしてががたる花崗岩の怪奇なる形状の岩峰の集合。