「ジェット旅客機の操縦マニュアル」といえるのが「飛行機運用規程」です。本書は、この飛行機運用規程をベースに、出発準備から到着まで、コクピットでジェット旅客機のパイロットがどのように操作しているのか、パイロットの操作で機体のシステムがどう作動するのかについて解説します。また、離陸時や着陸時の注意点、燃費が最良となる巡航高度や巡航速度の決め方、飛行重量と重心位置の関係や、それらの決定方法も説明します。
序章 操縦席に座ってみよう
第1章 プリ・フライト(飛行前)
第2章 エンジン・スタート
第3章 テイクオフ(離陸)
第4章 クライム(上昇)
第5章 クルーズ(巡航)
第6章 ディセント(降下)
第7章 アプローチ&ランディング(進入と着陸)
第8章 ウエイト&バランス(飛行重量とバランス
揚力は「揚力係数」×「動圧」×「翼面積」で決まる。
揚力は「静止している空気に運動をさせたことに対する反作用」と考えられる。
運動とは、翼の前縁で吹き上がり、翼上面の反りに沿うようにカーブを描き、後縁では吹き下がる、という運動。大きなカーブを描き、吹き下がる角度が大きければ大きいほど運動量が増加するため、空気の翼への反作用は大きくなる。つまり、翼後方への吹き下げ角度は揚力に比例する。
高速で空中を移動する翼には動圧が作用している。
動圧は空気の運動エネルギーによる圧力であり、単位面積あたりの力になる。
したがって、翼全体に作用する力は「動圧」×「翼面積」となる。
飛行機の翼は巡航時に最大の性能を発揮するように設計されているため、飛行速度が遅い離陸時には工夫が必要。それがキャンバーを大きくするフラップだが、さらに機首上げ姿勢(15度前後)にすることで揚力係数を大きくし(1.2~1.5)、飛行機を支えている。
なお、動圧が3倍以上ある巡航中は、飛行速度や飛行重量の変化にあわせて、飛行姿勢をごくわずか変化させて揚力係数を調整(0.3~0.4)し、飛行機を支えている。
「動圧」=1/2×「空気密度」×「飛行速度」2乗
離陸許可が下りると、昼夜に関係なくライディング・ライトをオンにする。
スラスト・レバーを約20TPRになるまで押し進める。
左右のエンジンが安定したことを確認し、TO/GAスチッチを押してオートスロットル(自動推進装置)を作動させる。
TO/GAはテイクオフ/ゴーアラゥンドを意味し、離陸推進および着陸を中断して上昇態勢に移る際に使用する最大推力であり、どちらの推力も同じだ。
TO/GAスイッチを押すとスラスト・レバーは自動的に動き出し、離陸推力に達すると動きが止まる。
加速を開始し、対気速度計が80ノット(150km)に達した段階で、PMは「80ノット」とコールする。PFは「チェック」と返答し、離陸推力がセットされていること、オートスロットルがHOLDモードになっていることを確認する。
安全な高度(400ft、1200m)に達するまでは離陸形態(離陸推力、フラップ離陸位置)を変化させてはならない規定。
80ノットを過ぎ離陸速度V1に達すると、PMのコールまた自動発声装置による「ブイワン」が操縦席内に響く。それを聞いた機長はスラスト・レバーから手を離す。
ローテーション速度に達するとPMは「ローテイト」とコールする。
PFは飛行機をリフトオフ(浮揚)させるために引き起こし操作を開始する。
引き起こし操作とは、エレベーター(昇降舵)を操作して水平尾翼に下向きの揚力を発生させ、主輪を支点に機首上げ姿勢にすることだ。自然浮揚できる速度まで待たずに機首上げ姿勢、つまり主翼の迎え角を増すことで、飛行機を支える揚力を発生させ、離陸に要する距離を短くするのが目的だ。
加速開始から滑走路上35フィート(10.7m)の高さまで達した点までの水平距離が離陸距離。
1500フィート(400m)まで上昇した時点で離陸完了となる。
要求される必要離陸滑走路長は、通常離陸距離の1.15倍、
加速継続距離、加速停止距離の中で最も長い距離。
鳥が飛翔しない飛行高度10,000フィートを通過した時点でランディング・ライトをオフにする。
富士山山頂で測定した気圧と地上0mの気圧の比から気圧高度を算出。
0.626(476mm÷760mm)
与圧装置の不具合や機体破損などにより急減圧が発生した場合には、安全高度まで緊急降下しなければならない。例えば、機内気圧が飛行高度37,000フィート(11,000m)と同じになった場合には、低酸素症により45秒前後で気を失ってしまう恐れがあるため、ただちに酸素マスクを装着する必要があるが、酸素供給には制限時間20分前後があるからだ。
デコンプ(急減圧)!!
オキシジェン・マスク(酸素マスク)!!
エマージェンシー・ディセント(緊急降下)!!
低酸素症(ハイポキシア)
高度 失神までの時間
12,000m 30秒
10,000m 60秒
8,000m 2~3分
6,000m 5~10分
4,000m 60分以内
世界空域予報センター;WAFC
「接地から停止するための距離」に「50フィートを通過して接地するまでの距離」を加えた水平距離が着陸距離となるが、使用する滑走路長の60%以内で停止する距離であることが求められる。