―こちらは朝鮮人民軍屋久島解放部隊です。現在、われわれは全島を武装制圧しています。違反を見つけた場合は警告なしに射殺します―突如、町中に響いた宣言。部隊は上陸に際し、多くの島民を虐殺、警察署などを爆破し、あらゆる通信を遮断した。山岳救助隊員・高津夕季と山岳ガイド・狩野哲也らは生き残りを賭けて、山嶺を駆け巡る！そんな中、作戦の鍵を握る敵特殊部隊隊長にして、美貌の女兵士ハン・ユリ大佐との邂逅が、彼らの運命を変える―。島民によるレジスタンス、海上自衛隊特別警備隊小隊長・国見俊夫の奮闘、そして占領軍総司令リ・ヨンギル将軍の目的と秘策。すべてが絡み合い、導かれる結末。奇跡を、目撃せよ！
防空システムの要であるジャッジシステムによって民間機や米軍機との識別がされたため、モニターには不明機である＜ＵＮＫＮＯＷＮ＞の文字が表示されている。
該当機に国際緊急周波数で領域接近の通告をしたものの応答なし。
提出されたどの航空機のフライトスケジュールとも照合しない。
即刻、築城（ついき）基地にある第8航空団、第6飛行隊に所属するＦ－２戦闘機2機での要撃出動となった。
近年、中国は尖閣諸島を含む自国の防空識別圏を設定し、それが日本側のものと重なっているため、問題となっていた。双方の防空識別圏が重なるということは、どちらの側からも領空侵犯を含む飛行行動が取れて、防空のための軍事行動が頻繁となる。いわば危険空域である。
モニターには米軍機を表す緑の三角形が、少しずつ北へと移動している。
屋久島の花崗岩は肌が粗く、生長石と呼ばれる四角い結晶が散らばっているのが特徴である。
蓋然性（がいぜんせい）
たぶんこの時期は混んでいるから外そうとして、空白ができる。
去年、周航したばかりの護衛艦＜やぶさ＞の基本排水量は3,000トンとかなり小型だが、最大速力は40ノット；時速74ｋｍ。海自の他の艦船に比べても抜きん出て速く、旧海軍で最速だった駆逐艦＜島風＞なみの速力を誇っている。
「本当にチョンジン型警備艇だとしたら、高性能の電子兵装を備えている可能性があります。いくらステルス性能の小型艇でも、近距離からならキャッチされる確率が高くなる。見つかって砲撃を受けたら、こちらは一巻の終わりだ」
「屋久島は月のうち、35日は雨」
林芙美子の小説「浮雲」