入籍・出発

「報告にきました。」
役所に来た二人の顔は、とてもうれしそうでした。

数年前、二人の間にはいろんなことがあって、一度は離れた二人です。
そのときから、家事は何もできなかった彼が、子どもたちのために食事を作り、
掃除をし、洗濯をし、ごみを出す、という生活を始めました。

本当にがんばっている彼の姿は、彼女にも届きました。
そして、それからは、子どもたちと一緒に家族みんなで暮らせる道を探ってきたのです。

二人はほんとうにがんばっています。
仲良く暮らすために、助け合っています。

今日の二人の笑顔は、本当にうれしかった。おそろいのスニーカーはいてたね。
二人の記念の日のスニーカー、撮ってあげればよかったなあ。

***

そして、そのすぐ後に、もうひとり「報告にきました。」
彼と出会ったのは、２年前になるかしら。
自分の生い立ちとその後の苦しみぬいた人生を話してくれた彼は、
尖がっていて、誰のことも信用できない、そんな空気を持っていました。

でも、話を聞くと、本当に大変な中におかれてしまい、その中で苦しみもがいてきた
ことがよくわかりました。根は、正直でまじめな人だということもよくわかりました。

そして、それからもいろいろあったけれど、
その彼が、「ようやく自分の心の中でも決着がついたんです。もう前を向いて歩ける。」と、
伝えに来てくれたのです。「話を聞いてくれてありがとうございます。一生忘れません。」
きちんとそう言ってくれる顔は、とても明るかった。

学校も行っていないという彼がくれた年賀状は、一生懸命に書いた字で、
心のこもった文章がつづられていて、本当にうれしかったことを思い出しました。

赤いスニーカーはいていたね。
新しい出発の日のスニーカー、撮ってあげればよかったなあ。

***

うれしくて、写真を撮るのは忘れちゃったけれど、心のアルバムには、ちゃんと貼りました。

***

飴をなめようとしたら、なかなか袋が開かなくてもたもたもた。
ようやく開いたと思ったら、なかには飴が２つ！
いつもはひとつずつなのに。
袋の中で２つ並んでいる姿がなんとも可愛らしくて、寄り添うっていいなあなんて
思った日なのでした。