931『自然と人間の歴史・世界篇』中国産出の半導体(2020)
2020年のはや半ば、中国企業が独自開発した初のDRAMチップが市場に登場した、という。そのニュースが世界を駆け巡ったのか、どうか。それというのは、長鑫(ちょうきん)存儲技術(ChangXin Memory Technologies(CXMT)、合肥市、
2020年のはや半ば、中国企業が独自開発した初のDRAMチップが市場に登場した、という。そのニュースが世界を駆け巡ったのか、どうか。それというのは、長鑫(ちょうきん)存儲技術(ChangXin Memory Technologies(CXMT)、合肥市、
以下、「CXMT」という)製のDRAM(ダイナミックラム、(注))チップを搭載したパソコン向けのメモリー・モジュールを、江波龍電子(以下、「ロングシス」という)や嘉合勁威(POWEV)などの大手モジュール・メーカーが発売した、というのだ。
(注)ここに「DRAM」とは「Dynamic Random Access Memory(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)」の略で、記憶内容を定期的に書き直すことが求められる揮発性メモリのこと。
ロングシスが出したのは、CXMTのチップを採用した容量8ギガバイトと16ギガバイトのDDR4型DRAMモジュール3種類にして、その際、「製造技術は国際的な水準に達している」と胸を張ったようだ。
そこで、、CXMTについて、少しなりとも触れておこう。そのパフォーマンスとしては、「第四代高速模组」として、「DDR4 模组是第四代高速模组,相较于DDR3 模组,性能和带宽显著提升,最高速率可达3200Mbps。 DDR4 模组是目前内存市场主流产品,可服务于个人电脑和服务器等传统市场,以及人工智能和物联网等新兴市场。」と「模组」ながらも、その後に「是目前内存市场主流产品」が付いていることからも、同社はこれに力を入れているように読めよう。
ちなみに、同社の「产品特点」としては、「高容量、高带宽、种类齐全、自主开发设、原厂内存颗粒」(2020.9.22アクセス時点の同社ホームページより)との文字が並ぶ。
これにいう「DDR4 SDRAM 」とは、半導体集積回路で構成されるDRAMの規格の一種であって、「 DDR3 SDRAM 」の次の次世代のものだ。 パソコンやサーバーでは2014年から、携帯電話では2015年から使われているという。
これがなぜ驚くべきことかというと、世界のDRAM市場は現在、かなりいびつな寡占市場となっている。韓国のサムスン電子とSKハイニックス、それにアメリカのマイクロン・テクノロジーの3社が、それぞれ大いなる部分を握る。
そんな中、国の威信をかけてであろうか、中国の半導体メーカーがかねてからDRAM参入の機会をうかがう。挑戦してはアメリカ政府の対中政策に阻まれるなどして、彼らは何度も失敗を繰返してきたという。
それというのも、アメリカ政府はこの話に早くから目を尖らせていたようであり、これの例を一つ拾うとしよう。中国のDRAMメーカーである福建省晋華集成電路(Jinhua Integrated Circuit Company:JHICC)か、アメリカのマイクロンテクノロジー(Micron Technology(の台湾子会社Micron Memory Taiwan(旧Inotera)からDRAM製造技術情報を不正に入手したとして、アメリカ政府からやり玉にあげられた。
そして迎えた2019年10月29日、アメリカ商務省は、国家安全上の理由からJHICCを輸出規制対象リストに加え、米系企業に対し同社との取引禁止を行う。それのみならず、これを仲介したとされる台湾のUMCおよび両社の従業員とともに、米国司法省から同年11月に起訴されるという、ダブルパンチを受ける。
かくして、JHICCが、この矢継ぎ早の措置に驚いたのは、この時すでに、製造設備の工場搬入の段階に入っていたことかある。しかして、その設備の中心は、多様な半導体製造設を繋いだラインならびに高度に気密性などを制御された施設をいう。
そして迎えた2019年10月29日、アメリカ商務省は、国家安全上の理由からJHICCを輸出規制対象リストに加え、米系企業に対し同社との取引禁止を行う。それのみならず、これを仲介したとされる台湾のUMCおよび両社の従業員とともに、米国司法省から同年11月に起訴されるという、ダブルパンチを受ける。
かくして、JHICCが、この矢継ぎ早の措置に驚いたのは、この時すでに、製造設備の工場搬入の段階に入っていたことかある。しかして、その設備の中心は、多様な半導体製造設を繋いだラインならびに高度に気密性などを制御された施設をいう。
そういうことだから、逆にいえば、アメリカ側はその時を狙って事を起こしたのかもしれない。ともあれ、Applied Materials、Lam Research、KLAなど米国装置メーカーは、同商務省の措置を受けて、技術者をすぐに引き上げてしまう。
UMCも、アメリカの制裁を恐れてJHICCとの協力関係を解消し、こちらも技術者らを台湾に引き上げてしまう。こうなると、同社は第1期工事だけでも約6,000億円を投資していたことから、事業継続は困難と判断し、装置立ち上げ途中のクリーンルームの電源を落とし、稼働中止に追い込まれた。
UMCも、アメリカの制裁を恐れてJHICCとの協力関係を解消し、こちらも技術者らを台湾に引き上げてしまう。こうなると、同社は第1期工事だけでも約6,000億円を投資していたことから、事業継続は困難と判断し、装置立ち上げ途中のクリーンルームの電源を落とし、稼働中止に追い込まれた。
ここで話をCXMTに戻して、そんなこんなでいみじくも、業界関係者によれば、「CXMTのチップの性能はまだサムスンなどの敵ではない」という話のようだ。
しかして、CXMTのチップは19nm(ナノメートル、ここに「ナノ」というのは、10のマイナス9乗)のプロセス技術で製造されているが、海外勢はすでに14~16nmのプロセス技術という。
いずれにしても、その差で結局のどころどのくらいの利益の差が出るのかが、かれらの間での国際競争力の優劣を最終的に決めるのだろう。
しかして、CXMTのチップは19nm(ナノメートル、ここに「ナノ」というのは、10のマイナス9乗)のプロセス技術で製造されているが、海外勢はすでに14~16nmのプロセス技術という。
いずれにしても、その差で結局のどころどのくらいの利益の差が出るのかが、かれらの間での国際競争力の優劣を最終的に決めるのだろう。
なお、日本にも、最近までDRAMメーカーは存在していた。しかして、2012年2月末に、日本唯一のDRAMメーカーで、DRAM世界市場3位のエルピーダメモリが会社更生法の申請に追い込まれる、製造業としては戦後最大の負債総額4480億円がかさんでいたことで、経済産業省も「お手上げ」であったろう。
そんな同社には前歴があって、なにしろこの事業には、莫大なカネがかかる、それなので、2009年6月末に産業活力再生特別措置法の認定を同省から受ける。それにより、日本政策投資銀行(政投銀)の増資引き受け(300億円)や、政投銀と民間銀行団の融資(約1000億円)によって梃子(てこ)入れされていた、それが約3年後にはあえなく白旗を上げるのであった。
(続く)
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