933『自然と人間の歴史・世界篇』止まらない新型コロナの感染拡大と最大規模の経済悪化(インドでの経緯)
一、感染拡大の第一波(一~五月)
インドでは、一月三〇日に国内で初の感染者を発見する。二月五日には、中国からのビザを無効化する。三月三には、デリーで初の感染者が発見される。三月上旬には、外交、公用、国連、就労、プロジェクトビザ以外の全てのビザの効力を停止した。その措置の中には、日本、イタリア、韓国、イランへ発行しているビザを無効化する。
それが三月一二日になると、外交官ビザ・就労ビザを除く全てのビザを無効化する。これを平たくという、段階的な水際対策から一変して、隣接する国との国境を封鎖するのであった。
三月一九日には、モディ首相が国民に向けて演説を行う。三月二二日午前七時から同九時まで外出を自発的に制限するよう国民に求める。
一、感染拡大の第一波(一~五月)
インドでは、一月三〇日に国内で初の感染者を発見する。二月五日には、中国からのビザを無効化する。三月三には、デリーで初の感染者が発見される。三月上旬には、外交、公用、国連、就労、プロジェクトビザ以外の全てのビザの効力を停止した。その措置の中には、日本、イタリア、韓国、イランへ発行しているビザを無効化する。
それが三月一二日になると、外交官ビザ・就労ビザを除く全てのビザを無効化する。これを平たくという、段階的な水際対策から一変して、隣接する国との国境を封鎖するのであった。
三月一九日には、モディ首相が国民に向けて演説を行う。三月二二日午前七時から同九時まで外出を自発的に制限するよう国民に求める。
まずは、この演説の冒頭、これは世界中で起きている事態であることを、国民に言い含めている。
「My dear fellow citizens,
The whole world is currently passing through a period of very serious crisis. Normally, when a natural crisis strikes, it is limited to a few countries or states. However, this time the calamity is such that it has it has put all of mankind in crisis. World Wars 1 and 2 did not impact as many countries, as have been affected by Corona today.
Friends,
This global pandemic is also going to have a wide-ranging impact on the economy. Keeping in mind the economic challenges arising from the Corona virus, the government has decided to set up a COVID-19 Economic Response Task Force under the leadership of the Finance Minister. This Task Force will take decisions in the near future, based on regular interactions and feedback from all stakeholders, and analysis of all situations and dimensions. This Task Force will also ensure that all steps taken to reduce the economic difficulties are effectively implemented.」
ここに「This Task Force will also ensure that all steps taken to reduce the economic difficulties are effectively implemented.」と言って、感染対策と経済との兼ね合いに触れることで、国民に安心感を与えたいようだ。
ところが、首相は、やがての下りで、こんな奇妙な言い回しをしている。
「It is clear that this pandemic is deeply hurting the economic interests and well-being of our nation’s middle class, lower-middle class, and poor segments.
In such a time of crisis, I request the business world and high income segments of society to as much as possible, look after the economic interests of all the people who provide them services.
In the coming few days it is possible these people may not be able to come to office or your homes.
In such a case, do treat them with empathy and humanity and not deduct their salaries. Always keep in mind that they too need to run their homes, protect their families from illness.」
要は、今回の新型コロナのパンデミックにより、中間層や下位の中間層、そして貧困層の経済的利益と「よりよく暮らすこと」がひどく傷ついているのは明らか」だとし、したがって、次にどういうのかといえば、「このような危機において、経済界と高所得層」の皆さんには、あなた方のところで働いてくれているすべての人たちの経済的利益に可能な限り配慮するようお願いしたいと思います」というのだ。
さらに続けて、「これからの数日は、こうした人たちは職場やあなた方の自宅に来ることができないかもしれません。ですが、そのような場合でも、共感と慈悲をもって彼らに接することで、給料を減らしたりはしないでほしい。彼らにも家庭があり、病気から家族を守らなければならないことを常に心に留め置きしておいてください。」とある。
この下りがあるがゆえに、首相や政権与党のインド人民党(BJP)、さらにその支持母体としての民族奉仕団(RSS)の、今回の新型コロナ感染対策の基本精神が見えるのではないだろうか。ここにあるのは、すべての国民が人としての尊厳を維持する権利があるがゆえに国民の政府はその維持、充実に努めなければならないということを忘れているか、無視しているのではないか。何より重要なのは、すべての国民が享受すべき、この権利を「善意」や「思いやり」の問題にすり替え、矮小化しているように感じられる。
そして迎えた同三月二二日には、デリー首都圏政府が、州境の閉鎖を含むロックダウン(外出禁止を伴う)を三月二一日から三一日にかけて実施すると発表する。三月二四日には、国家災害管理法に基づき、三月三一日までのロックダウンを発表する。
四月に入ると、ムンバイ市などで、公共の場でのマスク着用を義務化し、違反者には罰則を適用。同一四日には、ロックダウンを五月三日まで延長する一方、同一五日には、感染拡大リスクの低い地域で一部業種(商業、生産活動)再開を承認する。同五月一五日、政府発表の感染者数は約八万人、死者数は三千人弱となる。
五月一日、ロックダウンを五月一七日まで延長すると発表。同時に、全土を三つの地域分けし、感染リスクが低い地域では条件付きで一部の経済活動の再開を認可する。五月一七日、ロックダウンを五月三一日まで延長すると発表する。車両で州をまたぐ移動を許可するとともに特に感染リスクの高い地区を除き、三つゾーン全ての経済活動の制限を緩和する。五月二五日には、平常時の三分の一の国内旅客機のむ運航を再開する。五月三〇日には、ロックダウンを五月末まで延長するとしながらも、「封じ込め」の感染リスクの高い地区を除いて、三つのフェーズに分け、ロックダウンの段階的解除を視野にガイドラインを提示する。
一方、株価(代表的なSENSEX指数)は、三月の月初めの三万八〇〇〇ポイントが一八日には二万九〇〇〇ポイントに二〇%を上回って低下、とりわけ海外投資家のインド株式の売り越しが目立った。通貨ルピーも、同月二〇日に、一ドルが七五ルピーと史上最安値を記録した。景気の落ち込み懸念から、海外投資家によるリスク回避の資金流出が発生した模様だ。
企業活動面では、三月に入り、感染拡大の影響で新規受注が落ち込み企業活動の低下が続く。四月末の製造業PMI(購買担当者)は二七・四を記録、それが五月末には三〇・八にやや持ち直す。
二、感染拡大の第一波(六~十月)
五月末に、政権は、感染者の多い「封じ込め地区」は六月まで封鎖を継続するものの、三月二五日からの全国的なロックダウンを解除した。そして迎えた六月からは、経済活動の再開に本腰を入れていく。チャーター便利用でのビジネス目的による入国ができることとした。六月二九日には、封じ込めゾーンのロックダウン七月三一まで延長、それ以外の地域では活動制限を緩和する。
九月上旬から、地下鉄を再開した。なお、2020年9月2日時点での「COVID 19 Incidence」としては、こうなっている。
四月に入ると、ムンバイ市などで、公共の場でのマスク着用を義務化し、違反者には罰則を適用。同一四日には、ロックダウンを五月三日まで延長する一方、同一五日には、感染拡大リスクの低い地域で一部業種(商業、生産活動)再開を承認する。同五月一五日、政府発表の感染者数は約八万人、死者数は三千人弱となる。
五月一日、ロックダウンを五月一七日まで延長すると発表。同時に、全土を三つの地域分けし、感染リスクが低い地域では条件付きで一部の経済活動の再開を認可する。五月一七日、ロックダウンを五月三一日まで延長すると発表する。車両で州をまたぐ移動を許可するとともに特に感染リスクの高い地区を除き、三つゾーン全ての経済活動の制限を緩和する。五月二五日には、平常時の三分の一の国内旅客機のむ運航を再開する。五月三〇日には、ロックダウンを五月末まで延長するとしながらも、「封じ込め」の感染リスクの高い地区を除いて、三つのフェーズに分け、ロックダウンの段階的解除を視野にガイドラインを提示する。
一方、株価(代表的なSENSEX指数)は、三月の月初めの三万八〇〇〇ポイントが一八日には二万九〇〇〇ポイントに二〇%を上回って低下、とりわけ海外投資家のインド株式の売り越しが目立った。通貨ルピーも、同月二〇日に、一ドルが七五ルピーと史上最安値を記録した。景気の落ち込み懸念から、海外投資家によるリスク回避の資金流出が発生した模様だ。
企業活動面では、三月に入り、感染拡大の影響で新規受注が落ち込み企業活動の低下が続く。四月末の製造業PMI(購買担当者)は二七・四を記録、それが五月末には三〇・八にやや持ち直す。
二、感染拡大の第一波(六~十月)
五月末に、政権は、感染者の多い「封じ込め地区」は六月まで封鎖を継続するものの、三月二五日からの全国的なロックダウンを解除した。そして迎えた六月からは、経済活動の再開に本腰を入れていく。チャーター便利用でのビジネス目的による入国ができることとした。六月二九日には、封じ込めゾーンのロックダウン七月三一まで延長、それ以外の地域では活動制限を緩和する。
九月上旬から、地下鉄を再開した。なお、2020年9月2日時点での「COVID 19 Incidence」としては、こうなっている。
以下、P、C、Dの順で、Population (Mn)、Cases (Mn)、Death (‘000)を、ついでC/P(感染者数/人口)、D/C(死者数/感染者数)、D/P(死者数/人口)の値を記す。
Indiaは、1380、3.7、65、0.27%、1.757%、0.0047%。
USAは、331、6.1、185、1.84%、 3.033%、0.0590%。
Brazilは、212、3.95、123、1.86%、3.114%、0.0580%。
USAは、331、6.1、185、1.84%、 3.033%、0.0590%。
Brazilは、212、3.95、123、1.86%、3.114%、0.0580%。
Source: COVID 19 cases, John Hopkins University Dashboard, Sept 2, 2020(ジョンホプキンス大学のホームページと、Source: Population, Wordometers.info
から原数字を引用し、計算した。
そして迎えた同月一四日、タミル・ナドゥ州政府が、六月一九~三〇日の間、州都と周辺都市を封鎖すると発表。同月二九日には、政府は、感染者が集中するゾーンのロックダウンを七月末に延長、その一方でそうでないゾーンの規制を緩和する。こうなっては、全土封鎖による経済的打撃がこれ以上大きくなるのを避けるための同措置の緩和への転換が図られた模様だ。
折しも、七月二七日時点でのWHO(世界保健機関)発表の感染者数は累計一四三万であり、アメリカ、ブラジルに次いで世界で三番目の感染者数に拡大。これ以後のインドでの新型コロナの対策は、後手に回り続けていく、とりわけ全土封鎖の実施に関しては迷走を繰り返す一方、五月の経済対策の実行が現場に行き渡っているようには見受けられず、政府の対応に対する国民の不満足が浮き彫りになりつつあるのではないだろうか。
これらを映して、八月の株価(代表的なSENSEX指数) は、前月末の三万七六〇六ポイントから三万八〇〇〇ポイントへと上昇した(くわしくは、七月二三日には企業業績が好感されて三万八一四〇ポイントと、約四カ月半ぶりの高値を記録)。その後は一進一退が続く展開。通貨ルピーも、八月一七日に、一ドルが七四・八九ルピーと史上最安値からの回復は見られない。景気の落ち込み懸念から、海外投資家によるリスク回避の資金流出からの回復は見られない
企業活動面では、感染拡大の影響で新規受注が低迷してきた製造業PMI(購買担当者)が五二・〇と、景気拡大を示す五〇・〇水準をわずかに超えた、これは二月以来の伸びである。
九月下旬になると、一〇〇人までの集会を許可するとともに、タージマハルなどの施設公開を再開する。ただし、学校、映画館などの施設については閉鎖を継続する。
九月二二〇日現在までの判明している感染者数は約五五六万人にして、死亡者は約九〇万人というのが公式発表だ。ところが、ICMR(インド医学研究評議会)が九月下旬に行った抗体検査によると、一〇歳以上の住民の一五人に一人が陽性反応を示していて、これを二〇一一年の国勢調査での同全土人口に当てはめると六三七八万人となり、公表されている感染者数の約一〇倍に上ることになる。
それと、地区別では都市部のスラム地区では、一五・六%もの感染率であったという。
いずれにせよ、感染防止の態勢を整えることなくして、六月からの経済再開により感染は急拡大し、三か月の全土封鎖は大方失敗したと言わざるを得ない。
(続く)
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折しも、七月二七日時点でのWHO(世界保健機関)発表の感染者数は累計一四三万であり、アメリカ、ブラジルに次いで世界で三番目の感染者数に拡大。これ以後のインドでの新型コロナの対策は、後手に回り続けていく、とりわけ全土封鎖の実施に関しては迷走を繰り返す一方、五月の経済対策の実行が現場に行き渡っているようには見受けられず、政府の対応に対する国民の不満足が浮き彫りになりつつあるのではないだろうか。
これらを映して、八月の株価(代表的なSENSEX指数) は、前月末の三万七六〇六ポイントから三万八〇〇〇ポイントへと上昇した(くわしくは、七月二三日には企業業績が好感されて三万八一四〇ポイントと、約四カ月半ぶりの高値を記録)。その後は一進一退が続く展開。通貨ルピーも、八月一七日に、一ドルが七四・八九ルピーと史上最安値からの回復は見られない。景気の落ち込み懸念から、海外投資家によるリスク回避の資金流出からの回復は見られない
企業活動面では、感染拡大の影響で新規受注が低迷してきた製造業PMI(購買担当者)が五二・〇と、景気拡大を示す五〇・〇水準をわずかに超えた、これは二月以来の伸びである。
九月下旬になると、一〇〇人までの集会を許可するとともに、タージマハルなどの施設公開を再開する。ただし、学校、映画館などの施設については閉鎖を継続する。
九月二二〇日現在までの判明している感染者数は約五五六万人にして、死亡者は約九〇万人というのが公式発表だ。ところが、ICMR(インド医学研究評議会)が九月下旬に行った抗体検査によると、一〇歳以上の住民の一五人に一人が陽性反応を示していて、これを二〇一一年の国勢調査での同全土人口に当てはめると六三七八万人となり、公表されている感染者数の約一〇倍に上ることになる。
それと、地区別では都市部のスラム地区では、一五・六%もの感染率であったという。
いずれにせよ、感染防止の態勢を整えることなくして、六月からの経済再開により感染は急拡大し、三か月の全土封鎖は大方失敗したと言わざるを得ない。
(続く)
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