156の2『自然と人間の歴史・日本篇』石見銀山(16世紀)
2007年に国連ユネスコの世界文化遺産に指定された石見銀山(いわみぎんざん、現在の島根県大田市)は、喜ばしいことだ。
その記載物件名としては、「石見銀山遺跡とその文化的景観構成資産銀山柵内、 代官所跡、 矢滝城跡、 矢筈城跡、 石見城跡、大森・銀山、 宮ノ前、 熊谷家住宅、 羅漢寺五百羅漢、 石見銀山街道鞆ケ浦道、 石見銀山街道温泉津・沖泊道、 鞆ケ浦、 沖泊、 温泉津重要伝統的建造物群保存地区」と、広範囲に及ぶ。
要は、石見銀の採掘・精錬から製品の運搬、積み出しに至るまでを表す「銀鉱山跡と鉱山町」、「港と港町」、それに、これらをつなぐ「街道」も構成要素となっているのが、特徴的だ。
そもそもこの鉱山は、14世紀に発見された模様だ。その当時の確かな史料が見つかっているわけではない。その後は歴史の表面から消えたといおうか。一説には、「大内氏のもとで、採掘が行われていたのだが、一時的に中断していた」(豊田有恒「世界史の中の石見銀山」祥伝社、2010)とも言われる。
1526年(大永6年)には、博多商人の神谷寿貞(かみやじゅてい)が、仲間とともにこの地に入り、銀を掘り出す。
その時は、初めから銀を目当てにしていたのでななく、「出雲へ行こうとして船で石見の海を渡りながら、遥か南の山を望むと、かく然とした光が見えた」とされ、その通りなら、なんとも不思議な話では、ないか。
そうはいっても、寿貞としては、中国や朝鮮への輸出品であった銅を入手するべく、石見地方の東隣り合わせの出雲辺りに向けて日本海沿岸を旅していたのであるなら、そんなこともあろうかと情報探索も兼ねていたのかもしれまいに。
これに喜んだ寿貞は、この地を領有している大内義興(おおうちよしあき)の庇護を受けつつ、銀の採掘を行う。
その後、この辺りの事情は、大きく変わっていく。1550年代に下克上により大内氏が滅亡すると、石見地方の東方の出雲地方を本拠地とする戦国大名尼子氏(あまごし)が、この地方に散らばる「石見銀山」に侵入するようになり、そのうちに当地銀山群の支配権を掌握する。
それからしばらくすると、今度は安芸国に本拠をおく毛利氏が争乱状態にあった石見地方を奪うため、進出してくる。
毛利軍は、用意周到であった。その要衝とされる矢筈城(やはずじょう)や山吹城(やまぶきじょう)を手にいれようと、これらの城を巡って激しい攻防が繰り返される。
そしての1561年には、毛利軍が銀山地区に進出し、これを手中に収める。尼子氏は、そのことも影響してか、衰退への道をあゆんでいく。
かくて銀山を制圧した毛利氏は、そこから約9キロメートルばかり西に位置する温泉津(ゆのつ)や沖泊(おきどまり)に家臣をおき、銀山一帯の支配を進めていく。
やがて、そのルートで銀の搬出を円滑に行うべく、街道を整備していく。沖泊の港は温泉津港の北側にあたり、16世紀後半になると、鞆が浦に代わり銀の主要な搬出港となっていく。
1562年には、天皇や室町幕府などに対して銀山の一部を寄進したり、生産した銀の一部を献上するとともに、自らも生産した銀の多くを勢力拡大のために用立てていく。
その後の1580年代になると、戦国大名の毛利氏は豊臣氏の支配下に入る、そうなると、多くの富を生んでいる銀山経営をその後も手にしつつも、毛利氏としては、天下人秀吉による、より上位な支配を受けることにもなっていく。
(続く)
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それからしばらくすると、今度は安芸国に本拠をおく毛利氏が争乱状態にあった石見地方を奪うため、進出してくる。
毛利軍は、用意周到であった。その要衝とされる矢筈城(やはずじょう)や山吹城(やまぶきじょう)を手にいれようと、これらの城を巡って激しい攻防が繰り返される。
そしての1561年には、毛利軍が銀山地区に進出し、これを手中に収める。尼子氏は、そのことも影響してか、衰退への道をあゆんでいく。
かくて銀山を制圧した毛利氏は、そこから約9キロメートルばかり西に位置する温泉津(ゆのつ)や沖泊(おきどまり)に家臣をおき、銀山一帯の支配を進めていく。
やがて、そのルートで銀の搬出を円滑に行うべく、街道を整備していく。沖泊の港は温泉津港の北側にあたり、16世紀後半になると、鞆が浦に代わり銀の主要な搬出港となっていく。
1562年には、天皇や室町幕府などに対して銀山の一部を寄進したり、生産した銀の一部を献上するとともに、自らも生産した銀の多くを勢力拡大のために用立てていく。
その後の1580年代になると、戦国大名の毛利氏は豊臣氏の支配下に入る、そうなると、多くの富を生んでいる銀山経営をその後も手にしつつも、毛利氏としては、天下人秀吉による、より上位な支配を受けることにもなっていく。
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