「いったい、今までどこ向いて生きてたんだい!」と罵られてもしかたがない
いや、まったく、どうしてクラフト・エヴィング商會のことを知らずにいたのか、自分を疑いたくなる。
クラフト・エヴィング商會とは、吉田篤弘と吉田浩美のユニットで、2人は本の装幀を中心としたデザイン・ワークと著作の執筆を生業としているらしい。
洗練されたデザイン。
選りすぐりの、心を浮き立たせて物語空間に誘うような言葉の数々。
友人から「クラフト・エヴィング商會のおかしな展覧会──星を蕒る店」という展覧会を世田谷文学館でやっていると知らされ、そんなに言うほど面白いのなら出かけてみましょうか、と興味を引かれていってきた。
いやあ、言葉の使い方の感性の良さには驚いた。
こんなに言葉やデザインを駆使して創作をする作家がいたとは。
クラフト・エヴィング商會とはこの世にないものを取り寄せる店。
そしてこれまでの著作に出てきた架空の品物を、実際につくってしまい、それを展示したのがこの展覧会らしい。
例えばこんな言葉の使い方。(って、本のタイトルと月下密造通信の見出しと展示されていた中で拾ったネームだけど。あくまでも、本を読んだわけではないので、そういうものから抜粋)
・ 金曜日の夕方の本
・ 荒野のベーコン醤油ライスについて
・ クラウド・コレクター/雲をつかむような話
・ すぐそこの遠い場所
・ ないもの、あります
・ アナ・トレントの鞄
・ 古書一角獣
・ 月舟シネマ
・ アゾット国通行手形
・ 望永遠鏡
・ アルゴスの百目鏡
・ つむじ風食堂の夜
・ 密造酒の注文札
吉田篤弘のいくつもの著作の中にクラフト・エヴィング商會が物語の二次的存在として登場するそうだ。
ないものとあるものが混ぜこぜになって、独特な世界を作り上げている、というのが2人の、そしてこの展覧会の不思議な魅力となっている。
物語の中の本当と、本当の中の物語という感じ。
吉田篤弘の本を読んでみよう。
展覧会は30日(日曜)で終わり。見逃したくない方は、早速お出かけください。