『森は生きている』はロシアの詩人であり作家の
サムイル・マルシャークによって書かれた児童劇の脚本だ。
脚本なんだけれども書籍として出版され、
1953年に日本で刊行されて以来、たくさんの子供や大人に愛読されてきた。
ここにきて、サムイル・マルシャークと『森は生きている』について知りたくて
カスチョールの会(ロシア文学者田中泰子さんを中心に活動する
ロシア児童文学研究のための活動団体)の小冊子をいくつか見ていた。
そこで気がついたこと。
『森は生きている』というのは、
日本で出版する際に岩波書店編集部でつけたタイトル。
(当時はいぬいとみこさんが編集者。)
ロシア語の原題は『12の月』あるいは『12の月の物語』ということらしい。
『森は生きている』は大好きな本の一つだけれど、
ここにきて『森は生きている』というタイトルを口にするのは妙に照れくさい。
『森が生きている』が好きと言うより、
『12の月』『12の月の物語』が好きと言ういうほうが言いやすい。
なぜだろうと考えた結果、
昭和のセンチメンタルなニオイがするからじゃないかと思った。
あるいは、名詞で終わらないタイトルは、
インパクトはあっても耐久性に欠けるということかも。
『森は生きている』のタイトルが大好きという人もいると思うので、
こんなことを言うと顰蹙を買うかもしれない。
でも、個人的には『12の月の物語』でよかったのにと思ったり。
シェークスピアの戯曲のタイトルなど、
別に古びないしタイトルありきで通る。
それはたぶん、シェークスピアの場合、
原題にそった「名詞」の邦題がほとんどだからだ。
日本では外国の映画や本のタイトルを、
ぜんぜん別物にしてしまうこともけっこうある。
結果はともあれ、それってある意味、困るよ。