新橋演舞場でやっている『阿弖流為』を観てきた。
アテルイ役は、13年前の劇団☆新感染のときと同様、市川染五郎。
坂上田村麻呂の役に、中村勘九郎、立烏帽子の役に中村七之助という布陣。
中島かずき脚本、いのうえひでのり演出。
動きの早さと、派手な音楽と、ギャグで盛り上がっていく新感染の舞台を歌舞伎にしたらどうなるのだろう、という一抹の疑問があった。
お囃子で、あの歌舞伎のテンポでアテルイをやったとして、いったい、新感染の舞台のような高揚感が実現できるのかしらん。
もしかして、煮え切らない、中途半端なものだったら…。
しかし、それは杞憂だった。
多分シンセサイザーが入っているのだと思うけれど、メロディアスな音楽もあり、舞台の端では、つけ打ちの人が、ずっとつけを打っていて、歌舞伎の枠組みもあり。
花道が両サイドに設けられており、その花道を染五郎が、勘九郎が疾走する!
スピード感あふれる舞台だった。
チラシのうたい文句が「歌舞伎ネクスト」となっているけれど、まさに、従来の歌舞伎の様式から大きくはみ出した舞台となっていた。
最期は前三列に陣取る歌舞伎ファンのおばさまたちも、桟敷席の人も、3階席までぎっしり詰まった人たちも、拍手喝采のスタンディング・オベーション。
カーテンコールも素敵で、歌舞伎役者はプロのエンターテイナーなのだと、つくづく思った次第。
この面白さを見逃さなくてよかったー。
ちなみに、アテルイは、ウィキペディアによると平安時代初期の蝦夷の軍事指導者。789年(延暦8年)に胆沢(現在の岩手県奥州市)に侵攻した朝廷軍を撃退したが、坂上田村麻呂に敗れて降伏した。
延暦ということは、桓武天皇の時代のこと。遠い過去の出来事だ。
脚本がよくできていて、心を揺さぶる物語に仕上がっている。