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表紙と挿絵は、映画『アメリ』に登場する小道具や絵を制作したというので、日本でも人気のイラストレーター、ミヒャエル・ゾーヴァが担当している。
訳者の那須田淳は『ペーターという名のオオカミ』というYA向けの作品や、子ども向けの本で有名な作家のようだ。
さて、この本はSATP細胞で世界の注目を集めたあの小保方晴子さんが中2のときに読んで、千葉県の青少年読書感想文コンクールに応募し、教育長賞を受けた本。
それでやたら脚光を浴び、売れている。
なんでも2月だけで4万部も増刷したらしい。
これまでも「大人の童話」として、それなりに人気はあったようだけど。
出版元の講談社としては、棚ボタだなぁ。
「わあおっ!」と編集部の人が大声を上げている様が目に浮かぶ。
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ちいさなちいさな王様が登場するのだ。
大きさは人差し指の長さくらい。
ドイツ人で会社員をしている僕の部屋に、ある日、王様が現れるのだ。
そして、お近づきになった2人は、ときどきおしゃべりをする。
王様の世界では、生まれたときが大人で、だんだん小さくなって子どものようになり、やがて芥子粒よりも小さくなって、目に見えなくなり、消えてしまうのだという。
人間と逆だ。
で、王様はこう言うのだ。
「おれはな、おまえたちが、どんどん大きくなっていくっていう話は、やっぱり本当はちがうのではないかと思う。おそらく、単にそう見えるだけなのではないか、とな」
王様と主人公の僕との対話は、なかなか哲学的だ。
自分が今いる、あるいは自分でそう思い込んでいる立ち位置は、もしかしたら、もっと違ったふうにも考えられるのではないか。
そんなふうに視点をズラして考えることを促される。
ドイツでは発売年にベストセラーになった。