S・J・ローザンの本を最初に読んだのは、ビル・スミスが語り手となる『どこよりも冷たいところ』。 この本では、ビル・スミスがビルの建築現場でレンガ壁をつくる。潜入捜査だ。けっこう、男くさいシーンの連続。なので、わたしはてっきり、ローザンは男性作家だとばかり思っていた。 とんだ誤解でした。 ローザンはブロンクスで生まれ育ち、オハイオ州のオーバリン・カレッジで情報伝達学(映画及び写真)を学んだあと、ニューヨーク州立大学バッファロー校で建築学の修士号を得た。熱烈なバスケットボールのファンで、自らもプレーする。護身術インストラクター、管理人、宝石のセールスウーマンの職を経て、現在は、警察署、消防署、動物園舎などを手がけるニューヨークの建築会社に建築家として勤務。ヴィレッジの小さなアパートで、口うるさい猫のトミーと暮らしているが、他に兄ひとり、妹ふたり、そして並外れてユニークな甥が3人いる……そうです。(以上、創元推理文庫あとがきより抜粋) 現在ジュリアード音楽院で聴講生のような形で音楽も学んでいるらしいが、ローザン自身がピアノに堪能なのかは、どこにも記述がないところをみると、特筆するべきものじゃないらしいと解釈。 なんにしても、Sというのは、シャイラの略。 女性作家が女性の探偵を描くというケースはけっこうあるけれど、男性の探偵を描くというのは、すごく珍しいと思う。 ていうか、これほどストイックな心情を描けるのが、ちょっと不思議。 そういうのを才能というのかもしれない、と思ったり。