(ちなみに、岩波文庫によると、『資本論』は、「資本主義社会の経済法則を徹底的に分析し、その根本矛盾を究明して社会主義を科学的に基礎づけた不朽の古典」なんだそうです。)
そうです。マルクス主義で知られるカール・マルクスの、かの有名な著書にも、ロビンソン・クルーソーは登場しています。
彼は、超有名人です。
経済学がクルーソーに興味を抱くのは、けっきょく労働と労働時間、生産物の関係が、極めてシンプルだからのようです。
そこには他者が存在しないので(なんたって、無人島なんですから)、生産物の交換もない。貨幣もない。
社会性がない。(ああ、気の毒に…)
複雑な絡みが一切ないので、労働の価値、生産物の価値をそのものとして考えられる。
実験のために純粋培養されたバクテリアみたいなもんです。
『資本論』に、彼はこんなふうに登場しています。
「経済学はロビンソン物語を愛好するから、まず、ロビンソンを彼の島に出現させよう。
本来彼は控えめな男ではあったが、それでもとにかく彼は、各種の欲望を充足せしめなければならない。
したがってまた、各種の有用労働をなさなければならない。
道具を作り、家具を製造し、ラマを馴らし(お言葉ですが、マルクスさん。ロビンソン・クルーソーの島には、ラマはいません。)、漁りし、猟をしなければならない。
祈祷その他のことは、ここでは語らない。
というのは、われわれのロビンソンは、このことに楽しみを見出し、このような活動を休息と考えているからである。
彼の生産的な仕事がいろいろとあるにもかかわらず、彼は、それらの仕事が同じロビンソンのちがった活動形態にすぎないことを知っている。
したがって、人間労働のちがった仕方であるにすぎないことを知っている。
必要そのものが、彼の時間を、精確にそのちがった仕事の間に分配しなければならないようにする。
彼の総活動の中で、どの仕事が割合をより多く、どのそれがより少なく占めるかということは、目的とした有用効果の達成のために克服しなければならぬ困難の大小にかかっている。経験が彼にこのことを教える………」
とまあ、カール・マルクスは『第一篇 商品と貨幣 第一章 商品 第四節 商品の物神的性格とその秘密』の中で、こう語るのです。
ロビンソン・クルーソー以前に無人島の物語はない。
その後には、たくさんの無人島物語が生まれたのだけど。
「無人島に一人流されたとして、一つだけものを持ち込めるとしたら、何をもっていくか(物的にも状況的にも、生きる保障が確保されていると仮定して)」という普遍的な質問も、ロビンソン・クルーソーの物語が書かれたからこそ!!
ロビンソン・クルーソーの物語がいかにすごいアイデアであり、人生を集約していることか。
だから、いつまでたっても、ロビンソン・クルーソーは愛されるのかもしれません。
それこそ、経済学者にだって。
偉大な思想家にだって。
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