相変わらず、アーサー・ランサムの記事
せっかくのゴールデンウィークのキャンプも、キャンセルになったけど、
イギリスの湖沼地方では、ツバメ号の兄弟、アマゾン海賊たちが、思いっきり休暇を楽しんでいる。
いいなー。
ちなみに
「アーサー・ランサム~ようこそ、冒険と笑いと輝きに満ちた永遠の夏休みへ!」
「アーサー・ランサム②~ようこそ、冒険と笑いと輝きに満ちた永遠の夏休みへ!」
のつづきです。
●ライブ感満載の冒険物語
アーサー・ランサムのたぐいまれな才能の一つは、誰かも言っていたけれど、
それぞれの手順をことこまかに説明するうまさだ。
キャンプをしたり、ヨットを走らせた経験がなかろうと、物語の楽しみは少しも減ることはない。
ランサムが一から教えてくれる。
帆布によるテントのつくりかた、張り方。
具合よくテントで寝るためには、何が必要か。
戸外でのお湯の沸かし方。
ヨットの帆走の仕方。
船のこぎ方。
マストを立てるのは艇庫から船を出した後がいい、そうでないとマストがつかえて船を外に出せなくなる、などの言及。
また、たとえば子どもたちが湖を走らせるツバメ号の旗をどうやってつくるのか、とか。
それについては、こんな記述がある。
「ティティは小さい旗竿を農場にもって帰り、テントのあまりぎれを少し切って、三角形の旗をつくった。
おかあさんが、紙きれにツバメをかいてくれたので、ティティは、
もと半ズボンだった青いサージのきれからツバメを切りぬき、切りぬいた型を白い旗の上にのせて、
旗に、型そっくりの穴をあけた。
それから、その穴へ青いツバメをあてはめて、すっかり縫いつけた。
それが終わると、青いツバメがとんでいるりっぱな旗ができあがった。
旗はどちら側からもおなじに見えた。」(『ツバメ号とアマゾン号』上巻/岩波少年文庫)
さりげなく挿入された文章だけれど、「ほう、そうやってつくるのか」と納得する。
「なるほどねぇ…」と感心してしまうのだ。
どの箇所でも、ていねいな段取りとかやり方の説明があり、それらは退屈どころか、いやがおうにも臨場感をあおる。
実際に目の前で見ているように、自分で体験しているように感じさせる。
映像よりもリアル。
海のような広い湖でヨットを帆走させるのだから、スピード感もはんぱない。
読者をリアルタイムで冒険に誘ってくれる、とっておきの休暇物語。