サラ☆の物語な毎日とハル文庫

アーサー・ランサム④~偉大なる「ごっこ遊び」に夢中になる!

↑ウインダミア湖

 

アーサー・ランサムの生涯

 

アーサー・ランサムについての、物語へのアプローチ、4回目。

楽しさが伝わるといいのですが…。

 

●リアルな現実に一刷毛(ひとはけ)のマジック──〝ごっこ遊び〟

 

アーサー・ランサムは、ウィンダミア湖畔の家の納屋を仕事部屋にして、『ツバメ号とアマゾン号』の執筆に取り掛かった。
その仕事ぶりはこんなふう。
「古い納屋の二階で、私はいつもなにがどんなふうにおこるのかと思案していた。そして、書いているとさまざまなことが紙上にひょいひょいあらわれてくるので、私が他の人たちのために物語を書いているのではなく、だれかが私に物語をきかせてくれているような気がして、立ち上がって部屋を歩きまわりながら、くすくす笑うのだった」(『アーサー・ランサムの生涯』より)
 
そして『ツバメ号とアマゾン号』のなかでリアルな物語を描いているように思わせながら、想像力の大刷毛を振るっている。
子どもたちは冒険家であり探検家。
長男のジョンは船長。スーザンは航海士。ティティはAB船員、ロジャは船のボーイ。
湖の島は、大海の無人島に。大人たちは原住民に。(大好きな母親もその範疇に含まれる。)コンビーフの缶詰は船乗りたちの食べ物であるぺミカンに、ショウガシロップを炭酸で割ったイギリスならではの飲み物、ジンジャービアはラム酒に。
新たに発見した場所には、実際の地図にある地名ではなく、新しい名前が命名される。
 
唯一原住民ではないハウスボートに住む大人は、海賊のキャプテン・フリント。
ほどなく、ともに冒険を繰り広げるようになるナンシイ・ブラケットとペギイの姉妹は、船に髑髏の旗を掲げたアマゾン海賊だ。
そこにあるのは、自分たちだけの冒険の世界である。
〝ごっこ遊び〟というには、仕掛けは本格的。   
 
「休暇」という枠組みの中で、日常は姿を消し、それこそ、語り手のランサムが部屋を歩き回ってくすくす笑うような、ワクワクする世界が現出する。辛いこともあるし、手に汗を握るようなシーンも展開される。

 

基本的には大人の全面的な援助が約束されているとはいえ、それでも一挙手一投足を見守っているわけではない。
大人との約束をきちんと守ってさえいれば、冒険は自分たちのもの。ノロマでなければオボレナイ。ノロマにならないよう、常に自分の心に言い聞かせていればいいのだ。
 

 

どんな冒険にも本気で立ち向かい、根気の要る作業であっても、投げ出したりせずに、ひたむきに取り組む子どもたちの凛とした姿には、敬意を表せざるをえない。
 
本を手に取り、物語に入り込みさえすれば、読者は子どもたちと行動を共にし、休暇にひたりきることができる。
こんな楽しい物語を、知らないですませる法はない。

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