健康日本21で明記している厚労省の見解は下記の通りである。
1.はじめにたばこは、肺がんをはじめとして喉頭がん、口腔・咽頭がん、食道がん、胃がん、膀胱がん、腎盂・尿管がん、膵がんなど多くのがんや、虚血性心疾患、脳血管疾患、慢性閉塞性肺疾患、歯周疾患など多くの疾患、低出生体重児や流・早産など妊娠に関連した異常の危険因子である。喫煙者の多くは、たばこの害を十分に認識しないまま、未成年のうちに喫煙を開始しているが、未成年期に喫煙を開始した者では、成人になってから喫煙を開始した者に比べて、これらの疾患の危険性はより大きい。さらに、本人の喫煙のみならず、周囲の喫煙者のたばこ煙による受動喫煙も、肺がんや虚血性心疾患、呼吸器疾患、乳幼児突然死症候群などの危険因子である。また、たばこに含まれるニコチンには依存性があり、自分の意志だけでは、やめたくてもやめられないことが多い。しかし、禁煙に成功すれば、喫煙を継続した場合に比べて、これらの疾患の危険性は減少する。最新の疫学データに基づく推計では、たばこによる超過死亡数は、1995年には日本では9万5000人であり、全死亡数の12%を占めている。
また、人口動態統計によると、近年急増している肺がん死亡数が1998年に初めて胃がんを抜き、がん死亡の中で首位となった。さらに、たばこによる疾病や死亡のために、1993年には年間1兆2000億円(国民医療費の5%)が超過医療費としてかかっていることが試算されており、社会全体では少なくとも4兆円以上の損失があるとされている。欧米先進国では、たばこによる疾病や死亡が1960年代に既に、現在の日本の状況であり、この頃より種々のたばこ抑制策(消費者に対する警告表示、未成年者の喫煙禁止や、公共の場所の禁煙、たばこ広告の禁止などの様々な規制や、たばこ税の増額など)を講じた結果、国民の喫煙率や一人当たりたばこ消費量が低下した。その成果は最近になってようやく、男性におけるたばこ関連疾患の減少という形で現れつつある。これに対して、日本では、成人男性の喫煙率が先進国の中では極めて高率にとどまっているのみならず、近年若い女性や未成年者において喫煙率が上昇し、国民一人あたり消費量も先進国の中では最も多い。
それなのに・・・・・・・・
◇労働安全衛生法改正案を今国会に提出へ 毎日新聞 2月19日(水)21時54分配信
厚生労働省は19日、職場などでたばこの煙を間接的に吸ってしまう「受動喫煙」の防止に向け、対策強化を事業主の努力義務とした労働安全衛生法改正案を自民、公明両党の厚労関係部会に示した。今国会に提出する。民主党政権時、同省は対策強化を義務化した改正案を国会に提出(廃案)していたが、事業主らの反発に配慮し、今回の法案では努力義務規定に後退させた。
受動喫煙の防止策を巡っては、2011年に全面禁煙か、密閉された喫煙室を設ける「空間分煙」を事業主に義務づけた同法改正案が国会に提出された。飲食店や旅館などに関しては当面、換気によって煙を減らす対応も認めていたものの、事業主や、葉タバコ農家を有力支持団体に持つ自民党の反発は強く、審議入りできないまま12年の衆院解散に伴って廃案となっていた。
自民党への政権交代を受け、厚労相の諮問機関、労働政策審議会の分科会は昨年末、対策の義務化を取りやめる方針に転換。厚労省は旧法案の「全面禁煙や空間分煙」の義務規定を、新法案では「事業者の実情に応じた適切な措置」へとあいまいにしたうえで、努力義務に変えた。
このほか同法案は、仕事のストレスが原因で自殺する人やうつ病になる人を減らすため、医師か保健師による検査(メンタルチェック)を従業員に受けさせることを事業主の義務としている。また、12年5月に大阪市の印刷会社で化学物質にさらされた従業員らが胆管がんを発症していたことが発覚した問題などを踏まえ、事業主には一定の危険性がある化学物質(640物質)の有害性を調査することも義務づけている。【中島和哉】