紫の物語的解釈

漫画・ゲーム・アニメ等、さまざまなメディアにひそむ「物語」を抽出して解釈を加えてみようというブログです。

【乙一】特集~シチュエーションから始まる物語

2010-02-02 23:58:43 | その他
「乙一」は"オツイチ"と読む。日本の小説家である。
弱冠17歳で小説家デビューし、一発屋で終わらずに今日まで活動を続ける稀有な作家である。
(最近は本を出していないが・・。)

彼の作品は、まず変わった"シチュエーション"が前提となり、その上で物語が展開される
パターンが多い。
たとえば、デビュー作【夏と花火と私の死体】。

夏と花火と私の死体 (集英社文庫)
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集英社

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九歳の夏休み。「わたし」は友達の弥生ちゃんに大きな木の上から突き落とされ、死んでしまう。
恐ろしくなった弥生ちゃんは、小学六年生のお兄さん・健くんに相談し、「わたし」の死体を
隠そうと奔走する。

小学生の二人が、知恵を絞って死体を隠す話。しかも、それを"死体の視点から描く"という
17歳のデビュー作にしてはあまりにトリッキーすぎる作品。

「わたし」を押入れに隠したはいいが、来客に見つかりそうに!
「わたし」を水を張っていない田んぼに隠したはいいが、水を張られて大変なことに!
「わたし」を運んでいる途中で、「わたし」のお母さんに声をかけられドッキリ!

次々とおとずれる困った状況を、小学生にしては恐ろしく頭の切れる健くんの鮮やかな知恵で
なんとか乗り切る、というスリリングな演出も素敵。
倫理性など皆無。あくまでも、"死体を隠す"というシチュエーションに対して真摯に向き合った作品だ。

続いて、【暗いところで待ち合わせ】。
田中麗奈、チェン・ボーリン主演で映画化もされた。

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)
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全盲の女性が一人暮らしをする家に、ある日警察に追われる男が逃げ込む。
男はほとぼりが冷めるまで、全盲の女性に気づかれないように家に潜む。
女性は他人の気配を感じて怯えるが、気がつかないふりをすることに決める。
他人同士の奇妙な共同生活がはじまった。

変な"シチュエーション"は相変わらず。
女性は、自分の家に潜んでいる男がどんな人物か確かめるために、わざとストーブの
火力を最大にして寝たふりをし、相手がどんな反応をするかうかがったり、
男は男で、大怪我をしそうになった女性をうっかり助けてしまったり、
その翌日、女性は二人ぶんの食事をつくって無言で食卓に座るようになったりと・・・。
二人は決して言葉は交わさない。
奇妙なシチュエーションだけど、ちょっとハートウォーミングな話。


【きみにしか聞こえない】。
成海璃子、小出恵介主演で映画化もされた。

きみにしか聞こえない―CALLING YOU (角川スニーカー文庫)
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角川書店

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友達がひとりもおらず、携帯電話も持っていない女子高生。
さみしさを紛らわすために、自分だけの携帯電話を頭に空想する日々が続いていたが、
ある日その空想上の携帯電話に着信がある。
出てみると、北海道に住む同年代の少年の声がする・・・!

脳内携帯電話の話。
要はテレパシーということだが、通話する向こうとこちら側では、一定の時差が
発生しているというルール設定アリ。
この場合、女子高生と北海道の少年の間には一時間の時差がある。
この"一時間の時差"というギミックがラストでは有効に活用されるが
はげしくネタバレになるので詳しくは言えず・・・。


このように、乙一のシチュエーション設定のおかしさは一種の魅力であり、才能であると思う。
よくもまぁ、つぎからつぎへとこんな変なことを思いつくものだと感心する。
最近、本を出さないのはネタ切れ??
是非、復活を希望。

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