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以前、【ダイ大・ロト紋読み比べ】作中の経過時間についてという記事で
『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』と『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』
について読み比べを行いましたが、今回も別の観点から
この二作品を読み比べてみようと思います。
今回の観点は、ずばり魔物(ザコ敵)との戦闘シーン!
言うまでもなく、この二作品は『ドラゴンクエスト』の名を
冠している通り、ドラクエシリーズに登場するモンスターたちが
主人公一行の前に立ちふさがり、物語を盛り上げてくれます。
ゲームに登場するおなじみのモンスターたちが、
漫画作品の中に登場して大暴れすることもドラクエ漫画の
醍醐味のひとつです。
しかし、この二作品にはザコ敵との戦闘シーンの印象に
大きな隔たりがあることが、読み比べてみると
よくわかります。
それは一体どういうことなのか?
以下に見て行きましょう
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あらためて読み直してみると、『ダイの大冒険』では
ザコ敵との戦闘シーンが意外と少ないことがわかります。
以下、ザコ敵との戦闘シーンがあった場面を
箇条書きで列挙してみます。
・魔の森にて、じんめんじゅ・リカントと交戦
・魔の森にて、ライオンヘッドと交戦
・(ロモス襲撃戦ではクロコダインと直接交戦のためザコ戦なし)
・パプニカにてがいこつと交戦
・(地底魔城ではほとんど逃げてやりすごしたためザコ戦なし)
・バルジ島から逃げる気球船上でフレイム・ブリザードと交戦
・バルジ島決戦にて、さまようよろい・きとうし等と交戦
・ベンガーナにてドラゴン・ヒドラと交戦
・パプニカサミット会場にて、さまようよろい・ガストと交戦
・北方海上にてバルログ・サタンパピーと交戦
・破邪の洞窟にてスライムと交戦(ムチの一閃で逃走)
・破邪の洞窟にてミミック、シルバーデビル、ゴーレム等と交戦
・バーンパレス下の処刑場でさまようよろいと交戦
・バーンパレス最終決戦にて魔界の魔物(DQ4,5の強敵)との交戦
全編通してもこんなもんです。
意外でしたか?
そして、リストをよくみてみるとふと気づくことがあります。
それは・・・
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圧倒的なさまようよろいとの交戦率!
いや、キラーアーマーとかかもしれませんが(笑)
それにしてもズガッとこのよろいモンスターが砕かれる
シーンの多いこと多いこと。
他の交戦メニューも見てみると、なんかこう、
無機質な魔物との交戦が多いように感じます。
三条陸先生のなにかのインタビュー記事で読んだのですが、
実はこれには理由がありました。
それは、
鳥山明先生のかわいいデザインのモンスターが
痛ましくやられる姿を描きたくない
という理由だったようです。
考えてみれば、鳥山先生のかわいいデザインが生きる動物っぽい
魔物はことごとくクロコダインの配下だったわけで、
クロコダインが早々にダイたちの仲間になったことで
以降の物語では動物っぽい魔物と交戦する理由がほとんど
なくなってしまってます。
うーん、なるほどー。
しかも、注意深く各戦闘シーンを見てみると
派手にズバッと斬られたり砕かれたりしてるのは
さまようよろい系の敵だけで、他の生き物っぽい
魔物は打撃でのされたりといったマイルドな表現で
KOされている描写が目立ちました。
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↑まあ、一部例外はありましたが。ノヴァ・・・。
ドラクエシリーズは人間キャラも魔物キャラも
鳥山明風のかわいらしいデザインのキャラクターたちで
構成されているので、三条先生のこういった配慮も
うなずけます。
あと、それを抜きにしてもザコ戦闘自体が少ないのは、
ジャンプ漫画の特性上、次々と現れる強敵たちとの
タイマンでの戦闘シーンに重きを置いたからでしょう。
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さて、それに対してロト紋はどうだったかというと・・・。
これがザコ戦闘描写はダイ大とは比較にならないほど
多かったです。
あまりに多かったので、いちいちリストアップはしません。
それよりも注目すべきポイントは他にあります。
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それはザコ敵のやられっぷりの容赦の無さです!
前述の鳥山先生のかわいらしいデザインの敵が痛ましくやられる描写を
避けたダイ大の極北を行くような、まるで容赦のない描写!
あのラブリーなももんじゃが内臓ぶちまけてますからね!
この獣王グノンの軍勢と勇者一行の激しい戦闘シーンは
かなり見ごたえがあります。
たしかに描写はエグいですが、それでもこのシーンは
これくらい容赦のない描写がないとこれほどの
読みごたえにはなりません。
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勇者ロトの故郷・アリアハンを獣王グノンの十万頭の軍勢が囲み、
ロトの子孫・アルスを差し出さないと町を滅ぼすと脅しをかけた結果、
アルスはアリアハンの人々から追い立てられ、たったひとりで
十万の軍勢に挑むことになります。
そのときのアルスの怒りはアリアハンの町の人々にではなく、
人々の恐怖心をあおった獣王グノンに向けられました。
こんな状況になってまで、町の人々のことを想って戦うアルスに、
読者は「勇者」の姿を見ます。
それは、たったひとりで数え切れない相手に立ち向かい、
肉を断ち、返り血を浴び、呪文で何十匹も同時に焼き尽くし、
自分たちの周囲に魔物たちの死体の山ができていくという
激しい描写でもって、十分な説得力となって
読者に訴えかけてきます。
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実際、獣王グノンの軍勢との激しい戦いのシーンが
もっともロト紋で印象に残っているという人も
少なくないでしょう。
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鳥山明デザインのかわいい魔物が、という視点では
このグノン編での醜悪なバブルスライムもかなりインパクト強いです。
かつて、これほど醜悪にスライム系モンスターを描いた
ドラクエ漫画があっただろうか・・・。
ちなみに、この獣王グノン編での描写もなかなかのものでしたが、
後の冥王ゴルゴナ編では、ゾンビ化されて傷ついた部分が
異種再生していくモンスターが多数登場し、
グノン編とは別の意味で容赦のないザコ敵戦闘が描かれました。
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でも、まぁこんなネタっぽい一場面もありました。
左下・・・。
以上、こんな感じでダイ大とロト紋を作中のザコ戦闘描写の観点から
読み比べてみました。
まとめとしては、以前の作中経過時間の比較からも感じたことと同じく、
根本的に強敵とのバトル漫画のダイ大 と、
リアル志向の冒険漫画のロト紋 といったところでしょうか。
どっちがイイとかはないですが、(どっちもイイので)
たまには限定的な観点で真剣に読み比べてみると
より面白いですよー。
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自分的にはそれプラス「レベル上げ&レベルアップしたことの描写」がロト紋にはしっかりあった気がします。ジャガンにボコボコにされたあとはちゃんとレベル上げして再戦というスムーズな流れがありました。
そこ言うとダイ大は根本的に「竜の紋章効果で戦闘力が上がる」せいで序盤は紋章の発動さえできれば地力だけでどうにかできてしまった。中盤以降はダイの紋章からは戦闘経験がロードできないという難点もこれまでの戦闘経験がカバー、唯一足りない武器もダイの剣が後の鞘こそ無いものの「完全体」で登場、攻撃力もこの時点でMAXに。レベル上げがほとんど必要ない構成になってるんですかねえ。
ブッ飛ばされるわ爆殺されるわクビちょんぱされるわ・・・コミックス版裏カバーで悲惨な扱いを労われる始末。
魔物同士の愚痴り合いとか、恐怖に無理やり服従されるとか、カムイ版DQは組織に組み込まれた生々しさが出ていて、キャラのアイコン化が比較的容易なダイDQより好きでした。
後、強いて言えば技の強さ・違いがダイより分かりづらい印象。
多分ヤオやキラのイメージだけなんだろうけど。
漫画として興味わかなかった当時。
>漫画として興味わかなかった当時。
ダイ大もロト紋もそうですが、こういうマンガやアニメのドラクエの派生作品では、ザオリクや教会のお祈りでの復活はゲームのドラクエ程万能ではなく、人の命は重いものとして描かれてますよ。
現に作中でパーティーメンバーに使われたザオラルは失敗している・・・。
おまけにベホマでさえ一切回復しない傷とかが後半にはザラに出てきます。
クロコダインの潰れた片目もずっとそのままだったなあ。