クシシュトフ・ウルバンスキを迎えてメインはショスタコヴィッチの交響曲第6番ロ短調。その前にデヤン・ラツィックのピアノ独奏でラフマニノフのピアノ協奏曲第2番ハ短調が置かれた全部で70分程度の比較的短いマチネだった。まずラフマニノフではラツィックの爽やかであると同時に繊細極まるピアニズムが聴く者を虜にした。一方でウルバンスキーは冒頭から怒涛のようなロマンティックな流れを作るものだから、1楽章ではテンポ的にも音響バランス的にも表現的にも、どうもシックリといかない居心地の悪い時間が続いた。しかし1楽章の最後の弦の音を引き延ばして続いて演奏された2楽章になり、独奏と木管を中心とするオケとの静謐な絡みが始まると雰囲気が一転した。ピアノとオケの距離がグット縮まり、そこで奏でられたえも言われぬ親密な音楽はこの日の白眉だったのではないか。フィナーレはオケとの息もピタリを合って、ロマンティックながら決して情に溺れないスタイリッシュなラフマニノフとなった。盛大な拍手にショスタコヴィッチの幻想的舞曲からの一曲が弾かれて後半への橋渡しとなった。ショスタコヴィッチは1楽章ラルゴではあまり重暗さを感じさせないちょっと湿り気を帯びた進行が興味深かった。ここでは緊張感を絶やさず音の綾を表現し続けたオケは見事だった。続く2楽章アレグロを経てフィナーレのプレストはまさにウルバンスキの独壇場で、狂気の乱痴気騒ぎの切れ味は彼ならではのパーフォーマンスだったであろ。それにしても作者自身がこの曲を「春、喜び、若さ」の雰囲気と語ったというが、私には作者の「屈折した心」以外のものは聞こえてこなかった。
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