このびわ湖ホール座付きのアンサンブルは決して合唱団ではない。彼らはオペラ歌手・ソリストであると同時に合唱アンサンブルにも対応できるように日々研鑽を積んでいる歌手達であり、そうした意味では日本では他に類を見ない団体だと言って良いだろう。事実彼らは大ホールの本舞台での脇役として名を連ねるのみならず、彼らを主体とする中ホールでのオペラ公演も年に幾度かは開催されている。そうしたメンバーが本拠地びわ湖ホールで自主リサイタルを開催し、それと同時に東京でも同じ演目でリサイタルを開催した。今回はそうした定期的な公演の15回目ということになる。「4人の作曲家たち〜フォーレ、ドビュッシー、ラヴェル、プーランク」と題された今回のコンサートは、フランスを代表する4人の作曲家の合唱曲と歌曲を折り混ぜた滅多に聞くことにできないような興味深い内容であった。フランス・オペラのオーソリティである佐藤正浩の指揮によるフォーレの”ラシーヌ雅歌”で始まったコンサートは、メンバー14名と客演2名それぞれのソロによる歌曲と全員による合唱曲を織り交ぜながら、アンコールの”ラシーヌ雅歌”でしっとりと静かに幕を下ろした。単なる合唱団のメンバーではない彼ら一人一人の切々とした歌声を聞いて心から感動した。不慣れであろうフランス音楽を若干の差異はあるものの皆見事に自分のものにしていた。団員のそれぞれが極め高い技術と音楽性と訴える力持っていることは驚くべきことであり、こうしたメンバーが育ってゆくことはこれからの日本のオペラ界にとってどんなに心強いことだろう。佐藤正浩と共にピアノ伴奏を努めた下村景の伴奏者として秀でた音楽性も光っていた。今回の演奏曲目は、フォーレ:ラシーヌ雅歌、月明かり、マンドリン、夢のあと、マドリガル。ドビュッシー:星の夜、美しき夕べ、マンドリン、海な伽藍よりも、シャルル・ドルレアンの3つの詩。ラヴェル:3つの歌、ヴォカリーズ、花嫁の歌、ロマネスクな歌、夢。プーランク:美とそれに似たもの、マリー、王様の小さなお姫様、ヴァイオリン、パリへの旅、ホテル、愛の小径、平和への祈り。美しい秋の上野の杜で、フランスのエスプリ溢れる音楽と詩の世界を堪能した時間はかけがえの無いものだった。
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