アドルフ・ヒトラーというと、「帰ってきては困る人」の筆頭に挙げられそうですが、
この小説では、ヒトラー本人が21世紀にタイム・スリップしてきてしまいます。
もちろん、歴史の上では彼が率いていたナチスは消滅しているし、第2次大戦も終結しています。
もし彼が現在も生きていれば120歳を超えているわけですが、最初のうちはある種のカルチャーショックものといった感じです。
ヒトラーに関しては、さまざまな本や映画などで、その人物像が描かれています。
彼が行った悪政というか悪行は、人類史の汚点ともいうべきものですが、
ひとりの人間としてのヒトラーが、一体どういう人物だったのかということは、
歴史学や心理学においては、興味深い題材のようです。
我々がイメージしているよりは、ストイックな人物だったようですが…
この本のように、ヒトラーをユーモラスに描くことに、違和感というか抵抗を覚える方は多いと思います。
実際、ドイツでは賛否両論を巻き起こしたらしいですね。
ですが、現在の世界情勢は、ヒトラーが生きていたころに酷似している、という人もいます。
ある種のブラックジョークとして読んでしまうのはたやすいかもしれませんが、
ヒトラーが帰ってくる、というこの本のテーマを、ひとつのメッセージとしてとらえ、
同じ悲劇を繰り返さない、という我々一人一人の努力につなげていくべきではないでしょうか。