さて今回は、「老い」について考えたいと思います。
皆様はどんな時に「老い」を感じますか? 今まで何事もなかった坂道歩行で息が切れたり、膝の痛みや足の疲れを感じた時あるいは細かい字が見えにくくなったり、物忘れが多くなったと自覚した時に年をとったと感じるのではないでしょうか。
これらは体の各部の臓器の衰えとして捉えることができると思います。すなわち、息が切れるのは心臓・肺の衰え、膝痛や足の疲れは関節、筋肉の衰え、目が見えないのは眼の衰え、物忘れは脳の衰えといった感じです。そしてそれは臓器を構成する細胞が衰えることにほかなりません。
細胞がその役割を果たすためには、多くのエネルギーが必要です。エネルギーは、ATP(アデノシン三リン酸)という分子として供給されます。このATPを作る方法として、①細胞内にあるミトコンドリアで酸素を使って脂肪やブドウ糖から作る経路(TCA回路 効率が良い)と、②ミトコンドリアと酸素を使わずブドウ糖から作る経路(解糖系 効率が悪い)、があります。例えば、長距離走など持久力が必要な運動(有酸素運動)中の筋肉内ではTCA回路で、瞬発力が必要な短距離走(無酸素運動)中の筋肉内では解糖系からエネルギーを補給します。 そしてエネルギーが十分に供給されると細胞は活発に活動しますが、逆に不足すると十分な働きが出来ません。細胞の衰えとは、言い換えるとエネルギーが不足している状態であり、そのエネルギー量を左右するのが、効率よくATPを生成できるミトコンドリアの能力ということになります。
では、ミトコンドリアの能力を高めるにはどうしたらよいのでしょう。現在知られている方法は、カロリー制限と運動です。まさに生活習慣病の治療と同じです。 逆に言うと生活習慣病の人は、ミトコンドリアの能力が低くそのために老いやすいということになります。
次回は、このあたりをもう少し詳しく紹介したいと思います。
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