よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

「視覚」の成り立ち

2020-01-04 15:13:30 | 健康・病気
あけましておめでとうございます。東京オリンピックイヤーで、令和初のお正月ということもあり、いつもより高揚した気分で迎えられた方も多いのではないでしょうか。今年も皆様にとってよい一年でありますことをお祈りいたします。

 突然ですが、皆様が目を通して認識しているものは、本当にありのままの世界なのでしょうか? 今回は、「視覚」について考えてみます。

目の構造が、カメラの構造と類似していることはご存知のことと思います。

物体が反射した光は、角膜、水晶体、硝子体などを通過して網膜に到達します。網膜上に投射されたイメージは、経時的、空間的に強度や波長が変化する光のパターンとして明暗を認識する悍体細胞と色(赤・緑・青)を識別する錐体細胞にとらえられます。この情報を電気信号に変換し視神経を通して脳へ送ります。この情報は二次元情報ですが、脳の視覚中枢にて三次元に構築されて私たちの世界が認識されます。
別の言い方をすると、視覚とは、「何が」と「何処に」を脳が見出すプロセスとも言えます。このプロセスには、人類が進化の過程で得たイメージをパターン化する識別力(特にヒトの表情の識別は特別に発達しています)と三次元に構築し解釈する経験が必要です。前者は細胞レベルから脳へ伝達するボトムアップ情報処理(先天的要素が強い)であり、後者は、脳の学習や記憶機能によるトップダウン情報処理(後天的要素が強い)によります。したがって、視細胞の違いや脳機能の違いにより、同じものを見ても個人により認識する世界が微妙に違ってくるのです。例えば、抽象画を観ても感じ方は人それぞれです。

五感(味覚・嗅覚・聴覚・視覚・触覚)の中でも視覚情報の占める割合は8割を超えると考えられおり、視覚を磨くことで人生が違ったものなる可能性があります。私も、医学の知識向上および人生経験を通じて、皆様をより深く診ることができるように精進したいと思っております。


参考文献:「なぜ脳はアートがわかるのか」 青土社 エリック・R・カンデル