最近、「加齢臭」、「ミドル臭」、「スメハラ=スメルハラスメント」など体臭にまつわる「臭い」が話題になり、対策に悩んでいる方もおられると思います。一方異性!?の放つ魅力的な「匂い」もあります。今回は体臭について考えてみます。
嗅覚は、五感(その他に視覚、聴覚、触覚、味覚)のなかでも最も主観的な感覚です。
「臭い」は、揮発性化学物質が鼻腔奥の天蓋部粘膜にある嗅細胞を刺激し、それが電気信号として嗅神経を伝わり嗅球、扁桃体、視床下部、大脳皮質嗅覚部などを経由しながら情報処理され認識されます。すなわち「臭い」は脳で認識していることになり、人種、地域、生活環境、経験などによって培われた感覚であり、人それぞれ違うことになります。したがって、ある人にとっては、「心地よい匂い」も別な人には、「不快な臭い」と感じられたりします。
さて体臭には、大きく分けて「皮膚」からと「口」からの二つがあります。
「皮膚」から分泌される臭いの原因として、汗腺と皮脂腺があります。
汗腺はエクリン腺とアポクリン腺に分けられますが、エクリン腺は、全身の皮膚に分布しており、いわゆる玉のような汗で99%が水分で通常は臭うことはありません。一方、アポクリン腺は、脇、陰部、肛門周囲、乳首に分布しており、そこから出る汗は、乳白~乳黄色で栄養成分が豊富です。したがって時間が経つと皮膚常在菌により分解され発酵臭を発するようになります(腋臭など)。
皮脂腺は、手のひらや足底を除く全身の皮膚に分布し、脂肪酸やトリグリセリド、ワックスエステルから構成される皮脂を分泌します。分泌物は、汗と混合し乳化して表皮を保護する働き(殺菌、保湿など)があります。
ストレス時には、体内から発する活性酸素により酸化され臭いの原因になります。俗にいう「加齢臭」は、この皮脂の酸化(パルミトオレイン酸が酸化されノイナールとなる)が原因です。「ミドル脂臭」は、脂肪酸が酸化されたペラゴン酸、ジアセチルが原因とされています。
「口」からの臭いは、特に「口臭」と呼ばれますが、2割が呼気からで残り8割が口腔内の問題と考えられています。
呼気からの臭いは、肝臓で解毒できなかった毒素や腸管で発生したガスが血流にのり、肺でのガス交換の際に排出されることによります。
口腔内からの臭いの主因は、35歳以上の日本人の8割が罹患していると言われ歯周病です。通常口腔内には、700種、2000億個の常在菌が棲んでいます。口腔環境が不良であると、歯に歯垢が形成され、その周囲に細菌が増殖し慢性炎症を起こしているのが歯周病です。最近、歯周病は糖尿病や認知症などの疾患にも密接に関係していることがわかり、その対策が重要になってきています。
さて、病的な「口臭」には、①硫黄のようなにおい(虫歯)、②甘酸っぱいにおい(ケトン臭 飢餓、糖質制限食)、③腐った卵のようなにおい(胃腸障害)、④カビのようなにおい(肝機能障害)、⑤アンモニアのにおい(末期肝障害、腎機能障害)などが知られています。
ここで、体臭が不快な臭いになりやすいライフスタイルをまとめます。
Ⅰ.腸内環境が悪く食物が腐敗する
① 早食い、胃が悪い②食物線維が不足③便秘④肉食
Ⅱ.臭い分子が肝臓で解毒できず、血液をめぐり、呼気、汗から排泄される
⑤アルコール、肝機能が悪い⑥糖尿病、メタボ⑦中性脂肪が多い
Ⅲ.汗腺や皮脂腺からのにおいが悪化する
⑧汗をかく習慣がない⑨ストレスが多い(精神的発汗 変な汗)
⑩慢性的に疲れている(アンモニア臭)
では、「体臭」対策としてどのようなものがあるでしょうか。
当然、上記のライフスタイルを避けるため、食生活改善、適度な運動、十分な休息が必要です。
本来、健康な皮膚には個々に合った常在菌がバランスよく棲んでおり、このバランスを崩す石鹸やシャンプーなどを用いた頻回な洗浄はかえって良くないかもしれません。
歯みがきの見直しも必要です。私たち自らが分泌する唾液は、一日1~1.5リットル分泌され、食物の消化や嚥下を助けることはもちろん、①洗浄作用②殺菌作用、細菌の共凝集抑制作用③歯表面のコーティング作用④口腔内pH調整作用⑤歯の再石灰化作用などがあり口臭予防に重要な働きをしてくれます。一方、歯周病菌は、1時間毎に2倍に増殖し、8時間後からバイオフィルム(菌膜)を作り歯垢を形成すると考えられています。したがって、十分は唾液分泌があれば、毎食後すぐに歯を磨く必要はなく(歯磨き粉も必要なし)、眠前と起床時の2回の歯磨きで十分です(ただし、磨き残しがないように)。
体臭が「臭う」ことは、「他人に不快」で「自分に不健康」と認識し、健康管理のバロメーターとして気にしたいと思います。
参考文献:桐村里紗『日本人はなぜ臭いと言われるのか 体臭と口臭の科学』光文社新書
嗅覚は、五感(その他に視覚、聴覚、触覚、味覚)のなかでも最も主観的な感覚です。
「臭い」は、揮発性化学物質が鼻腔奥の天蓋部粘膜にある嗅細胞を刺激し、それが電気信号として嗅神経を伝わり嗅球、扁桃体、視床下部、大脳皮質嗅覚部などを経由しながら情報処理され認識されます。すなわち「臭い」は脳で認識していることになり、人種、地域、生活環境、経験などによって培われた感覚であり、人それぞれ違うことになります。したがって、ある人にとっては、「心地よい匂い」も別な人には、「不快な臭い」と感じられたりします。
さて体臭には、大きく分けて「皮膚」からと「口」からの二つがあります。
「皮膚」から分泌される臭いの原因として、汗腺と皮脂腺があります。
汗腺はエクリン腺とアポクリン腺に分けられますが、エクリン腺は、全身の皮膚に分布しており、いわゆる玉のような汗で99%が水分で通常は臭うことはありません。一方、アポクリン腺は、脇、陰部、肛門周囲、乳首に分布しており、そこから出る汗は、乳白~乳黄色で栄養成分が豊富です。したがって時間が経つと皮膚常在菌により分解され発酵臭を発するようになります(腋臭など)。
皮脂腺は、手のひらや足底を除く全身の皮膚に分布し、脂肪酸やトリグリセリド、ワックスエステルから構成される皮脂を分泌します。分泌物は、汗と混合し乳化して表皮を保護する働き(殺菌、保湿など)があります。
ストレス時には、体内から発する活性酸素により酸化され臭いの原因になります。俗にいう「加齢臭」は、この皮脂の酸化(パルミトオレイン酸が酸化されノイナールとなる)が原因です。「ミドル脂臭」は、脂肪酸が酸化されたペラゴン酸、ジアセチルが原因とされています。
「口」からの臭いは、特に「口臭」と呼ばれますが、2割が呼気からで残り8割が口腔内の問題と考えられています。
呼気からの臭いは、肝臓で解毒できなかった毒素や腸管で発生したガスが血流にのり、肺でのガス交換の際に排出されることによります。
口腔内からの臭いの主因は、35歳以上の日本人の8割が罹患していると言われ歯周病です。通常口腔内には、700種、2000億個の常在菌が棲んでいます。口腔環境が不良であると、歯に歯垢が形成され、その周囲に細菌が増殖し慢性炎症を起こしているのが歯周病です。最近、歯周病は糖尿病や認知症などの疾患にも密接に関係していることがわかり、その対策が重要になってきています。
さて、病的な「口臭」には、①硫黄のようなにおい(虫歯)、②甘酸っぱいにおい(ケトン臭 飢餓、糖質制限食)、③腐った卵のようなにおい(胃腸障害)、④カビのようなにおい(肝機能障害)、⑤アンモニアのにおい(末期肝障害、腎機能障害)などが知られています。
ここで、体臭が不快な臭いになりやすいライフスタイルをまとめます。
Ⅰ.腸内環境が悪く食物が腐敗する
① 早食い、胃が悪い②食物線維が不足③便秘④肉食
Ⅱ.臭い分子が肝臓で解毒できず、血液をめぐり、呼気、汗から排泄される
⑤アルコール、肝機能が悪い⑥糖尿病、メタボ⑦中性脂肪が多い
Ⅲ.汗腺や皮脂腺からのにおいが悪化する
⑧汗をかく習慣がない⑨ストレスが多い(精神的発汗 変な汗)
⑩慢性的に疲れている(アンモニア臭)
では、「体臭」対策としてどのようなものがあるでしょうか。
当然、上記のライフスタイルを避けるため、食生活改善、適度な運動、十分な休息が必要です。
本来、健康な皮膚には個々に合った常在菌がバランスよく棲んでおり、このバランスを崩す石鹸やシャンプーなどを用いた頻回な洗浄はかえって良くないかもしれません。
歯みがきの見直しも必要です。私たち自らが分泌する唾液は、一日1~1.5リットル分泌され、食物の消化や嚥下を助けることはもちろん、①洗浄作用②殺菌作用、細菌の共凝集抑制作用③歯表面のコーティング作用④口腔内pH調整作用⑤歯の再石灰化作用などがあり口臭予防に重要な働きをしてくれます。一方、歯周病菌は、1時間毎に2倍に増殖し、8時間後からバイオフィルム(菌膜)を作り歯垢を形成すると考えられています。したがって、十分は唾液分泌があれば、毎食後すぐに歯を磨く必要はなく(歯磨き粉も必要なし)、眠前と起床時の2回の歯磨きで十分です(ただし、磨き残しがないように)。
体臭が「臭う」ことは、「他人に不快」で「自分に不健康」と認識し、健康管理のバロメーターとして気にしたいと思います。
参考文献:桐村里紗『日本人はなぜ臭いと言われるのか 体臭と口臭の科学』光文社新書