よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

おなかのカビ!?

2021-07-12 08:27:07 | 健康・病気
 体の免疫細胞の7割が集中し、栄養面だけでなく生体の維持に重要な役割を果たしている「腸」。腸内には細菌、寄生虫、カビなど様々な生物が共棲していますが、今回はカビ(真菌)に注目してみます。

 正常ではカビの腸内生物に占める割合は1%と言われます。しかし、その数が異常に増えると、「食後異常にお腹が張る、ガスがたまる」、「食べても食べてもお腹がすく」、「異常に甘いものが欲しくなる」、「食後に異常に眠くなる」、「頭がぼーっとして集中できない」、「酔ったようにふわふわする」などの症状がでてきます。
病気としては、便秘・下痢・腹痛などの消化器障害、慢性的な皮膚疾患(特に顔の発疹・赤み)、頭痛、関節痛、記憶力低下、倦怠感・抑うつ、肛門や陰部のかゆみ、生理前の不調、自己免疫疾患、低血糖症、アレルギー疾患、栄養吸収障害、化学物質過敏症などの原因になります。

 腸内のカビが増える理由
① 抗生物質(細菌は死ぬが真菌は死なない)の乱用。その他の薬物として、免疫機能抑制作用のあるステロイド、エストロゲン優位にする経口避妊薬(ピル)などがあります。
② 発酵食品(麴菌、酵母菌)の摂り過ぎ。味噌、醤油、酒などカビの仲間で発酵した食品は、体に有用な働きをすることで知られていますが、腸の調子の悪いときに摂り過ぎると逆効果になることがわかってきました。 
③ 日本の気候と住環境。カビは温度、湿度、酸素の条件がそろえば発育しますが、温暖、多湿の日本は繁殖しやすくなっています。また高密閉の住居、カーペットなどもカビの温床になります。

 カビの弊害
① 腸の炎症を引き起こす カビは腸壁に食い込んで増殖
② 有害物質(アルコール、アラビノース、シュウ酸、酒石酸、グリオトキシン、マンナン、アセトアルデヒド、マイコトキシンなど)を発生させる
③ 低血糖を引き起こす カビに糖質を横取りされる
④ 免疫のトラブルを起こす 自己免疫疾患の原因になることあり カンジダ抗体はグルテン(小麦)にも反応して炎症をおこす
⑤ 様々な悪循環をおこす 炎症→免疫力低下→感染症→抗生剤使用→カビ増殖
⑥ ビタミン・ミネラル不足になる

 カビの検査として、遅延型アレルギーの原因として酵母菌(カンジダもこの仲間)などのIgG抗体を調べる、尿有機酸検査(カビの生成物)、βグルカン(カビの細胞壁の成分)を調べるなどがあります。ただ、多くが自費検査のため高額な費用がかかり、結果の解釈が難しいこともあり、積極的には行われていません。そのため、カビの増殖が疑われる人は、カビ対策を実践して効果の有無で判断することが多くなっています。

 カビ対策として、具体的にどうすればいいのでしょうか。これには、カビを増やさない「守りの対策」と減らす「攻めの対策」があります。
「守りの対策」として、大事なのは「安易に抗生物質を飲まない」ことです。さらに、「食べる抗生物質」と言われる遺伝子組み換え食物(GMO作物)を摂らないことです。GMO作物は、当然グリフォセートを含む農薬を使い栽培されますが、この残留物質が腸内細菌の成長を阻害、エネルギー産生阻害、解毒阻害、免疫異常などの問題をおこすと考えられています。
 カビを増やさない食事として、①甘いものを減らす、②炭水化物を減らす(パン、麺類など小麦製品は避ける、ただし米、イモ、そばは比較的安心)、③GMO食物や添加物(化学調味料、人工甘味料、発色剤、着色料、香料など)を減らす、④質のいい蛋白質や無農薬の野菜をとる(ただしお腹の張りが強い間は控えめに)、⑤毎日同じものを食べずにローテーションを考える、⑥トウモロコシ、コーヒー、小麦、ナッツ、アルコール、チーズ、輸入果物などカビの生じやすい食品を避ける、⑦ビタミン、ミネラルなどのサプリをたくさん取らない、⑧体に合わない食品は避け、時にプチ断食をするなどがあります。
 「攻めの対策」としては、①抗真菌作用を持つ食品(ニンニク、梅肉、グレープシードオイル、オレガノ、ココナッツオイル、MCTオイル、ローズマリー、クローブ、シナモンなど)を摂る、②定期的に体を高温にする、日光浴をする、③抗真菌薬を飲むなどがあります。
ただ、急激にカビ退治をすると有害物質が多量にでる(ダイオフ現象)があるので注意が必要です。
まず甘いものを1カ月控える、アルカリ性食品(野菜、梅干し、海塩、重曹など)を摂る、活性炭(カビ毒を吸着する)やビタミンB6(カビの放出する有害物質の形成を防ぐ)を摂る、便秘を避ける、ミネラルを含んだ水分をしっかりとる、などが勧められます。
 また住居でのカビ退治も重要です。敷物・観葉植物・古い本、雑誌を置かない、頻回に換気するなどがあります。

 参考文献:内山葉子『おなかのカビが病気の原因だった』マキノ出版