よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

尿酸について(2)

2014-01-22 14:32:16 | 健康・病気

 

 前回では、尿酸とは何か?高尿酸血症になるとどうなるのか?についてお話しました。では次に、高尿酸血症といわれたらどうしたらよいでしょう。

 基本的には、糖尿病、高血圧、脂質異常症といった他の生活習慣病と同じで、食べすぎ、飲みすぎ、運動不足、ストレスといった生活習慣を見直し肥満を解消することが重要です。

 食事では、プリン体を多く含む食品を控えることが必要です。特に多いのは、動物の内臓、魚の干物です。野菜、海草といったいわゆるアルカリ性食品は、プリン体含有量が低いものが多く、尿酸の溶解度を高める効果があり推奨されます。またアルコールは制限し、十分に水分補給することも尿酸の結晶化を防ぐのに有用です。その他、乳製品は積極的に摂ることが勧められ、しょ糖・果糖の過剰摂取は控えるのがよいと言われます。

 過度の運動は尿酸値を上昇させることがありお勧めできませんが、適度の有酸素運動では、肥満、高血圧、耐糖能異常、脂質異常などが改善し、間接的に尿酸値が下がることが期待されています。週3回以上の運動を目標にしましょう。
 
これらで十分尿酸値が下がらない場合は、薬物治療になります。尿酸産生を抑えるタイプ、尿酸排泄を促進するタイプがあります。

 最後に、尿酸の生体内での意義についてお話します。

 結晶化が危惧されるにも関わらず飽和濃度に近い濃度で血中に保持している理由として、抗酸化作用があります。抗酸化作用とは、今話題になっているアンチエイジングとも関係しますが、細胞の損傷を抑える働きがあります。さらに、尿酸値が低いため生じる病態としてアルツハイマー病やパーキンソン病との関連も報告されており、神経保護作用もあると考えられています。

 健診で尿酸値を測ることがあれば、適正値(2.0~7.0mg/dl)であるか気にかけていただければよいと思います。

 


尿酸について(1)

2014-01-22 14:19:29 | 健康・病気

 皆様は、「尿酸」と聞いてどんなことを思い浮かべますか? 「足が腫れて激しく痛む痛風という病気の原因」あるいは「健康診断で高いと言われたけど・・・よくわからない」などでしょうか。 今回は、このあまり聞きなれない「尿酸」についてのお話です。

 尿酸は、プリン体と呼ばれる物質のヒトにおける最終代謝産物です。プリン体には、アデニン、グアニンといった核酸(遺伝子の本体であるDNARNAの一部)やアデノシン三リン酸(ATP)と呼ばれる生命活動に必要なエネルギーを貯蔵する物質があります。すなわち、プリン体は細胞すべてに含まれているため、細胞の新生、崩壊、代謝やエネルギー活動によって絶えずその代謝産物が生成されていることになります。この代謝産物の最終が尿酸です。尿酸は主に肝臓により産生され、腎臓から排泄されます。通常は産生と排泄のバランスが保たれているのですが、産生過剰あるいは排泄低下により血中の尿酸値が高くなった状態を高尿酸血症(7.0mg/dl以上)といいます。

 
高尿酸血症の原因として、遺伝、食事(プリン体やアルコールの摂取量増加)、運動不足あるいは逆の過度の運動、ストレス、肥満があげられています。 飲酒により尿酸値があがることが知られていますが、そのメカニズムとして、①アルコールによってATPの分解が促進され尿酸生成が増える、②アルコール飲料にプリン体が含まれている、③大量飲酒により生成された乳酸が尿酸排泄を抑制する、などが報告されています。日本人の高尿酸血症の割合は、成人男性で30%、女性は3%であり圧倒的に男性に多い疾患です。

 

 さて高尿酸血症が続くと、血液中で溶解していた尿酸が溶けきれなくなり、関節内や腎臓で結晶化して貯まるようになります。関節内の結晶が炎症をおこすと痛風関節炎と呼ばれる激痛を伴う病気になります。腎臓内で結晶化すると痛風腎になります。痛風発作の好発部位は、下肢で特に足第1趾(親指の付け根)が赤く腫れ歩けなくなります。痛風腎では、腎機能が障害されるだけでなく、尿酸結石が尿管につまり水腎症となり腰背部激痛の原因となります。
 また痛みが生じなくても高尿酸血症が持続することで動脈硬化が進行し、脳血管障害、虚血性心疾患の原因となることも疫学調査から明らかにされています。