よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

最高の呼吸法(2) ~ゆっくり小さな鼻呼吸のすすめ~

2018-09-18 17:34:48 | 健康・病気
前回、呼吸は、口呼吸(胸式呼吸)ではなく鼻呼吸(腹式呼吸)ですることの大切さを説明いたしました。
さらに、鼻呼吸をゆっくり小さくおこなう(すなわち呼吸量を減らす)ことにより、低酸素血症や高二酸化炭素血症に対応する能力が向上し、結果として健康維持や運動能力アップが可能となることをお話しました。 別の言い方をすると、『呼吸をしろ』と命令するのは、体の中の酸素濃度が低くなることより二酸化炭素濃度が高くなることであるため、最高の呼吸法のカギは、二酸化炭素への耐性を高めることにほかなりません。

現在の自分の二酸化炭素への耐性がどの程度であるかを測定する方法として、「体内酸素レベルテスト(BOLT)」があります。BOLTは、単純に息を止めていられる時間ではなく、「息をしたい」という欲求を最初に感じるまでの時間を測ります(これがBOLTスコアと呼ばれます)。
具体的には、
1.鼻から不通に息を吸い、また鼻から普通に息を吐く
2.鼻をつまむ(息を完全に止めるため)
3.そのままの状態で、「息をしたい」という最初の欲求を感じるまでの時間を計る(唾を飲み込みたくなったり、気管が収縮するような感じになったりしたら、欲求がでたサイン。最初に呼吸筋が反応するまでの時間)
4.欲求を感じた時点でストップウォッチを止めて鼻から手を離し、鼻で呼吸を再開する(再開時に大きく息をしなければならないようなら、それは息を止める時間が長すぎる)
5.通常の呼吸に戻る

 ここで、BOLTスコア20秒以上の方はある程度定期的に運動をしている人で、20秒以下の人は何らかの呼吸器症状をかかえていると考えられます。そして、健康な大人の理想的なBOLTスコアは40秒です。
では、BOLTスコアを上げるにはどうすればよいでしょう。
これからBOLTスコアを上げる3つのステップをご紹介します。


ステップ1:二酸化炭素のロスをなくす(BOLTスコア10秒以下)
 一日の自分の呼吸を観察する
・起きているときも寝ているときも、つねに鼻呼吸をする
    ・ため息をつかない(つきそうなら、飲み込むか息を止める)
  ・あくびをする時や話すときに大きく呼吸しない
  
ステップ2:二酸化炭素への耐性を高める(BOLTスコア10~20秒前後)
 呼吸量を正常になるまで減らすエクササイズをする
  ・鼻から静かに小さく息を吸い、鼻から静かに小さく息を吐く
         ・指で鼻をつまみ、息を止める
・息を止めたまま歩けるところまで歩く
・呼吸を再開するときも、必ず鼻で呼吸してすぐに静かな呼吸に戻す(最初の呼吸は通常より大きくなるだろうが、出来るだけ早く通常に戻る)
  ・1~2分待ち、また先ほどのように息を止める
・このエクササイズを6回繰り返し、かなり強く息苦しさを感じる状況をつくる
  
ステップ3:疑似高地トレーニングを行う(BOLTスコア20秒以上)
 歩きながら息を止める
・1分間普通に歩いたら、鼻からゆっくり息を吐いて鼻をつまんで息を止め、中度から強度の息苦しさを感じるまで息を止めたまま歩く。
・鼻から手を離しし、15秒間は呼吸を最小限にして通常の呼吸に戻す
  ・30秒歩き、それを繰り返す
  ・息止めを8~10回繰り返す
ポイント: 大きく息を吸いたくなるのが、自分の呼吸量が減っていることを示す唯一の証拠なので、プログラムに沿って頑張る。
         
自分のBOLTスコアを把握し、これらのエクササイズを段階に応じて実践しBOLTスコアを伸ばすことができれば、呼吸量が減り、末梢組織での酸素分配の効率の良くなり高二酸化炭素血症にも順応でき、呼吸過多による生じる酸化ストレスも減らすことができます。
さらに、最小限の呼吸は、瞑想状態をつくり、集中力を高めてくれます。アスリートであれば、いわゆる『ゾーン』に入る状態で高いパフォーマンスを発揮することができます。

正しい呼吸法(鼻呼吸で呼吸量を少なくする)を身につければ、体調がよく、疲れにくい体になり、しいては人生が変わります。 実際、気管支喘息・心臓病などの治療や肥満の改善、健全な骨格形成(歯並び、あごの発達など)に重要な役割を果たしていることが明らかになっています。

始めるのに年齢は関係ありません。今日から気軽に始めてみましょう。

   
参考文献:パトリック・マキューン 『人生が変わる最高の呼吸法』