脂肪は、燃料として使われる時は脂肪酸、貯蔵されるときはトリグリセリド(別名、中性脂肪=三つの脂肪酸+グリセリン分子〔ブドウ糖の代謝産物〕)と形態を変えます。
さて、脂肪組織内の脂肪の量を調節している生物学的因子は何でしょうか?この過程には数十のホルモンや酵素が関与していますが、最も重要なのがインスリンです。
インスリンの主な作用は、血糖調節です。食後の高血糖に対し、血糖を一定に保つように膵臓から分泌されます。その方法は、ブドウ糖を血液から細胞内に取り込むスピードを速め、細胞は取り込んだブドウ糖の一部分を燃料として直ちに燃やし、それ以外は後で使用するため貯蔵します。筋肉細胞は、ブドウ糖を「グリコーゲン」という分子として貯蔵します。肝細胞は一部をグリコーゲンとして貯蔵し、一部を脂肪に変えます。そして脂肪細胞は、脂肪として貯蔵します。
同時にインスリンは、脂肪の貯蔵と利用を調節する役割も果たします。この仕事は、主に2つの酵素を介して行われます。一つはLPL(リポ蛋白リパーゼ)でもう一つがHSL(ホルモン感受性リパーゼ)です。LPLはさまざまな細胞の細胞膜上にあり、血液から細胞内へと脂肪を取り込む働きがあります。インスリンは脂肪細胞のLPL活性を上げ、脂肪を積極的に貯蔵します(=太る)。一方HSLは、脂肪細胞で中性脂肪を脂肪酸に分解し、脂肪酸が血液循環できるようにする働きがあります。インスリンは、このHSLを抑制し脂肪細胞内の中性脂肪が減らないようにします(=やせない)。さらにインスリンには、新たな脂肪を貯蔵する場所を確保するために脂肪細胞を作る作用もあります。
要するに、インスリンが行なうことはすべて、貯蔵する脂肪を増やし、燃やす脂肪を減らすように作用し、結果太らせることになります。
さて、このインスリン分泌を規定しているのが、血糖を急激に上昇させる炭水化物(その量と質)です。 すなわち、どの程度の脂肪を蓄積させるのか(=太るかどうか)を決めるのは炭水化物ということになります。 また同じ食事内容でも、野菜を先に食べて、お米を最後に食べると血糖の上昇が緩やかになりインスリン分泌量を減らすことができ、その結果太るのを抑えることができます。
最近マスコミでもさかんに取り上げられているやせるための糖質制限は、このことが理論的根拠となっています。