よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

“肥満”について考えてみよう!(2)

2014-06-17 14:48:38 | 健康・病気

 

 脂肪は、燃料として使われる時は脂肪酸、貯蔵されるときはトリグリセリド(別名、中性脂肪=三つの脂肪酸+グリセリン分子〔ブドウ糖の代謝産物〕)と形態を変えます。

 さて、脂肪組織内の脂肪の量を調節している生物学的因子は何でしょうか?この過程には数十のホルモンや酵素が関与していますが、最も重要なのがインスリンです。

 インスリンの主な作用は、血糖調節です。食後の高血糖に対し、血糖を一定に保つように膵臓から分泌されます。その方法は、ブドウ糖を血液から細胞内に取り込むスピードを速め、細胞は取り込んだブドウ糖の一部分を燃料として直ちに燃やし、それ以外は後で使用するため貯蔵します。筋肉細胞は、ブドウ糖を「グリコーゲン」という分子として貯蔵します。肝細胞は一部をグリコーゲンとして貯蔵し、一部を脂肪に変えます。そして脂肪細胞は、脂肪として貯蔵します。

 

 同時にインスリンは、脂肪の貯蔵と利用を調節する役割も果たします。この仕事は、主に2つの酵素を介して行われます。一つはLPL(リポ蛋白リパーゼ)でもう一つがHSL(ホルモン感受性リパーゼ)です。LPLはさまざまな細胞の細胞膜上にあり、血液から細胞内へと脂肪を取り込む働きがあります。インスリンは脂肪細胞のLPL活性を上げ、脂肪を積極的に貯蔵します(=太る)。一方HSLは、脂肪細胞で中性脂肪を脂肪酸に分解し、脂肪酸が血液循環できるようにする働きがあります。インスリンは、このHSLを抑制し脂肪細胞内の中性脂肪が減らないようにします(=やせない)。さらにインスリンには、新たな脂肪を貯蔵する場所を確保するために脂肪細胞を作る作用もあります。

 要するに、インスリンが行なうことはすべて、貯蔵する脂肪を増やし、燃やす脂肪を減らすように作用し、結果太らせることになります。

 

さて、このインスリン分泌を規定しているのが、血糖を急激に上昇させる炭水化物(その量と質)です。 すなわち、どの程度の脂肪を蓄積させるのか(=太るかどうか)を決めるのは炭水化物ということになります。 また同じ食事内容でも、野菜を先に食べて、お米を最後に食べると血糖の上昇が緩やかになりインスリン分泌量を減らすことができ、その結果太るのを抑えることができます。

最近マスコミでもさかんに取り上げられているやせるための糖質制限は、このことが理論的根拠となっています。

 


“肥満”について考えてみよう!(1)

2014-06-17 14:44:08 | 健康・病気

太っていることに悩んでいる方は多いと思います。巷では、何百というダイエット法・治療法が紹介され話題になります。大まかに分類すると食事療法・運動療法・精神療法・手術療法といったところでしょう。人によってうまくいったりいかなかったり、一時的にうまく減量しても長続きせずリバウンドしてまた体重が元に戻ったという話しもよく聞きます。

 

 肥満は、一般にはBMI(body mass index)25で定義されます。すなわち、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)25を超えると肥満といわれます。厳密にいうと増えているのは脂肪であり、水分でむくんでいたり、筋肉質で体重が重い(相撲取りなど)は含めません。脂肪も皮下脂肪と内臓脂肪に分類され、現在医学的に問題になっているのは内臓脂肪ということになります(無論、スタイルの面から皮下脂肪をなんとかしたいと思っている方もいらっしゃるとは思いますが)。

 

 さて、脂肪が増えるとはどういう状態なのでしょう。脂肪には、余分なカロリーを貯蔵する役割(脂肪1kg=7000kcal)があることはよく知られています。

 そこで登場するのが、”入るカロリー/出るカロリー理論”です。すなわち、たくさん食べて(高カロリー食)て、消費するカロリー(運動)が少なければ、太るという論理です。これはあまりにも当然過ぎて疑いのない真実のように思えます。そして肥満者に対して、「食べるのを控え、運動しなさい」とアドバイスします。でもこれは本当に正しいのでしょうか?

 

「ヒトはなぜ太るのか?」(ゲーリー・トーベス著)は、この疑問に明確な答えを提供しています。過去に行われた様々な疫学調査や動物実験から、①高カロリー食が肥満の原因ではなく、炭水化物と糖分が脂肪を増やし肥満になる原因、②運動してもやせない(食欲が増してかえって太る)と論じています。著書には、次の肥満三原則が提唱されています。

 

 第一法則:からだの脂肪は入念に調節されている 

 第二法則:肥満は、非常にわずかな脂肪調節不良によっておこる

 第三法則:肥満させかつ重くするあらゆるものは、過食させる

          (過食は原因ではなく結果である)