よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

禁煙について(2)

2010-12-30 12:16:41 | 健康・病気

 日本循環器学会や日本呼吸器学会など9学会がまとめた「禁煙ガイドライン」によると、喫煙は個人的趣味・嗜好の問題ではなく“喫煙病(依存症+喫煙関連疾患)”という全身疾患であり、喫煙者は“積極的禁煙治療を必要とする患者”であると認識しなければならないと書かれています。
 前回書きましたさまざまな喫煙関連疾患のため禁煙が必要となるわけですが、ここで問題になるのが依存症の問題です。過去においては、禁煙できないのは意思が弱いためといわれていましたが、現在ではニコチン依存症という病気であるというのが現在の認識になっています。

 依存症というのは、身体的依存と心理的依存があると考えられています。すなわちニコチンという薬物が体に及ぼす影響を身体的依存といい、喫煙衝動およびその他の禁煙困難要因をニコチンの心理的依存というわけです。この二つの依存をうまくコントロールして禁煙に導く方法が禁煙治療の骨子となります。
 ニコチンの身体的依存として、禁煙時に離脱症状(気分の落ち込み、イライラ感、不安感、集中力低下、不眠症など)が生じます。この離脱症状は、禁煙開始1~3日をピークとして1ヶ月程度続くと言われています。離脱症状を緩和する方法として薬物療法があります。禁煙補助剤にはニコチンを含むガムやパッチを使用する方法とニコチンを含まない内服薬があります。
 心理的依存を克服する方法としては、心理療法をベースにした医師・看護師など禁煙治療者によるアドバイスがあります。例えば、タバコを吸いたくなる衝動は1~3分間なのでその間、ガムをかむ、深呼吸をする、体操をするなどで気を紛らわすといったテクニックの紹介やなぜ禁煙することになったかを思い出したり、禁煙して良かったことを考えて禁煙を継続していく精神的なサポートをします。

 これらの禁煙の手助けをするのが保険適応も認められた禁煙外来になります。禁煙は独力で行うと成功率は8%程度といわれていますが、禁煙外来を利用すると楽に高い成功率(50~70%)で実行することができます。
 喫煙者の皆様は、喫煙病という病気であることを認識して一日でも早い禁煙をされることをお勧めいたします。


禁煙について(1)

2010-12-30 12:09:53 | 健康・病気

 近年、健康意識の高まりとともに喫煙による弊害がさかんに取り上げられるようになりました。先進国の中で、喫煙者に甘いといわれる日本でも公共の場では禁煙が当たり前になりましたし、職場やレストランでも分煙のところが増えてきました。今年10月からは、タバコ代も値上がりし、愛煙家の方は何となく分が悪いのを感じていらっしゃるのではないでしょうか。

 さて、たばこの害とはどのようなものでしょう。

たばこの煙には約4000種類の化学物質が含まれていると言われ、その内200種以上は有害物質であり、約40種類は発癌物質であることが判明しています。目に見える粒子相成分は3%で、ニコチン、ベンツピレン、フェノール、砒素などが知られています。残り97%はガス相成分で、ホルムアルデヒド、シアン化水素、アセトアルデヒド、アンモニア、一酸化炭素などが知られており、これらは空気清浄機でも除去されません。

またこれら有害物質はたばこのフィルターを通して吸う主流煙よりも副流煙に多く含まれるため、喫煙者本人だけでなく周りの人にも影響を及ぼすという間接喫煙(受動喫煙)の問題も引き起こします。

 では、この煙を吸い込むことによりおこる体への影響にはどのようなものがあるでしょう。

まず有名なのが悪性腫瘍の原因です。肺ガン、咽頭・喉頭ガンなど呼吸器系のガンのみならず、胃ガン、膵臓ガン、膀胱ガンなど全身のガンの発生率を上げることが知られています。次に、喫煙は動脈硬化をきたす独立した危険因子であり、脳卒中、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症などの心血管系疾患になる頻度が非喫煙者の23倍になります。このメカニズムは、①血管内皮の傷害、②糖代謝障害、③脂質代謝障害④凝固・線溶能の亢進などの複合と考えられています。その他、気道の炎症を介して多くの呼吸器疾患の原因にもなります。慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎)の8割は喫煙者という報告もあります。また高血圧、糖尿病や脂質異常症など生活習慣病の割合も非喫煙者に比べて喫煙者が有意に高いことが知られています。妊婦さんがタバコを吸うと(間接喫煙を含む)、胎児胎盤系の障害をきたし、流産、早産、低体重児出生、先天奇形の率が高くなります。

これらは喫煙関連疾患といわれますが、次回は本題の禁煙について書きたいと思います。

 


肺炎球菌ワクチンについて

2010-12-04 10:46:29 | 健康・病気

 インフルエンザワクチン以外に最近よく話題となるワクチンが、肺炎球菌ワクチンです。肺炎球菌は、肺炎のみならず、慢性気道感染症、中耳炎、副鼻腔炎、敗血症、髄膜炎などの起炎菌として知られています。日本人の死亡原因の第4位が肺炎ですが、肺炎のなかで一番頻度が高く、しかも重症になることが多いのがこの肺炎球菌によるものです。そこで開発されたのが23価肺炎球菌ワクチンです。

 肺炎球菌はさらに細かい型に分類されていますが、そのうちの23種類に対応できるように作製されています(これは日本に分布する肺炎球菌の約80%をカバーします)。接種対象者は、2歳以上で、脾臓摘出者(脾機能不全者)、心臓・肺の慢性疾患、腎不全、肝機能障害、糖尿病などの基礎疾患のある患者、65歳以上の高齢者、免疫抑制剤による治療が予定されている患者です。

このワクチンを接種することにより、健康な人では少なくとも5年間は抗体レベルが上昇した状態が続くといわれています。しかしながら高齢者や免疫機能の低下した人では、抗体レベルの低下が早いことも知られており、初回接種から5年以上経過し、肺炎球菌による重篤疾患に罹患する危険性が極めて高い人は再接種者の対象とされています。

またこのワクチンは不活化ワクチンですから、インフルエンザワクチンを接種した場合でも、6日間以上間隔をおけば接種できます(同時に左右上肢に分けて接種することも可能です)。

 このワクチンを接種すれば絶対に肺炎にならない訳ではありませんが、健康管理の一つとしては有効な手段だと思います。ちなみに米国では、65歳以上の高齢者の接種率は70%と言われていますが、日本では公費助成が一般化していないこともあり接種率は低いのが現状です。


インフルエンザについて(2)

2010-12-01 08:30:04 | 健康・病気

インフルエンザに感染すると、潜伏期間13日と短い期間を経て突然の発熱(38度以上)、著明な全身倦怠感、関節痛、筋肉痛などが出現し、通常の風邪とは違う重症感があります。通常は57日で解熱し全身症状も改善しますが、急激に呼吸状態が悪くなるウイルス性肺炎やインフルエンザ脳症と呼ばれる意識混濁、全身痙攣など命にかかわる合併症をきたすこともあります。他人への感染力は、発熱前1日から解熱後2日まであると考えられており、その間は人との接触を避けるのが望ましいです。

ウイルスですから抗生物質は効果なく、以前は対症療法(解熱薬、鎮咳薬など)しかありませんでした。しかし、最近はインフルエンザの特効薬が出現し非常に効果をあげています。ノイラミニダーゼ阻害薬と呼ばれる薬は、ウイルスの増殖を抑える働きがあり、感染早期に服用すると症状の進行を抑え劇的に症状が改善します。現在日本では、経口・吸入・点滴の投与方法で4種類が使われています。タミフルがその代表で、昨年の新型インフルエンザの流行時には、日本での致死率低下、感染拡大の抑制に大きな貢献をしたと考えられています。しかし、その乱用により耐性菌も出現していることや若年者では副作用として異常行動がおこる危険性が指摘されていることが問題となっています。

ワクチンや薬の力を借りないでインフルエンザを撃退するにはどうしたらいいでしょうか? それは自己免疫力を高めることです。これができれば少々インフルエンザの流行の型が変わっても対処できます。

具体的には、ストレスを避け休養をとる、入浴し体を温める、運動する、よく笑う、黄緑色野菜、きのこ類を食べる、手の爪付近を揉む、モーツアルトの音楽を聴く・・・などいろいろあります。基本的には、副交感神経活動を活発にしてリンパ球活性を高めることが理論的根拠になっているようです。

皆様も自分にあった方法を実践し、インフルエンザに負けない体つくりを心がけたらいかがでしょうか?