ハヤカワepi文庫
訳・土屋政雄
2008年8月 発行
2020年6月 73刷
解説・柴田元幸
439頁
優秀な介護人キャシー・Hは“提供者”と呼ばれる人々の世話をしています
生まれ育った施設ヘールシャムの親友トミーやルースも提供者でした
キャシーの施設での奇妙な日々の回想は残酷な事実を明かしていきます
2010年公開の映画も2016年の綾瀬はるかさん主演のテレビドラマも観ていませんがおよそ内容は知っていて覚悟の上の読書でした
悲しい物語なのです
しかし、キャシー、ルース、トミー、ヘールシャムの出来事等がひとつひとつ丁寧に語られていて自然にゆっくりと彼らの物語世界に入っていきながら、じっくりと読むことができました
これまで読んだカズオ・イシグロ作品の中では一番読みやすかったです
自分たちの悲しい運命を受け入れながら生きた若者たちの静謐な青春像
是非とも映画を観なくては、と思った次第
https://blog.goo.ne.jp/narkejp/e/c84ab5d2110358fb843849465c92e4a7
本書のようなクローン作成と移植医療ではなく、自分の細胞を自分の体内で補完していくような方向に進んでいることが救いですね。
そうですね。IPS細胞の研究に大きな期待をしている患者さんも多いかと思います。自分の細胞で、というのが当たり前の時代が早く来るとよいです。
私は映画→原作⇒ドラマ(途中で挫折)という順番でした。小説の感想は結局書けずじまいになってしまいました・・・。
映画版は、学校の校長をシャーロット・ランプリングおねーさまが演じていますよ♪
お姉さまなんですか!!!
ピッタリですね。
益々観たくなりましたっ!
ドラマの挫折が気になりますぅ(#^.^#)
それはまるで、ヘールシャムの生徒たちが大切なことを「教わっているようで、教わっていない」のと同じような状態。
トミーの言う「何か新しいことを教えるときは、ほんとに理解できるようになる少し前に教えるんだよ。だから、当然、理解はできないんだけど、できないなりに少しは頭に残るだろ?その連続でさ、きっと、おれたちの頭には、自分でもよく考えてみたことがない情報がいっぱい詰まってたんだよ」ということ。
注意を違うことにひきつけておいて、その間に他の内容を忍び込ませるというのは、当たり前のことなのでしょうけれど凄いですね。
そして、それこそが、カズオ・イシグロの小説の書き方なのかもしれません。
キャシーの語る物語は、終始押さえ気味。
決して興奮したり激昂したりしません。
しかし、淡々とした語り口が逆に哀しく、そして、予想しながらも見えてくる光景がとても怖いですね。