角川書店
2016年2月 初版発行
462頁
2013年刊行「かんかん橋を渡ったら」の続編
山間の小さな温泉町、津雲で父亡き後、常連客に支えられながら食堂『ののや』の暖簾を守り続ける高校生の真子と継母の奈央
客の笑い声が溢れる店に、ある晩、新顔の青年が現れます
東山と名乗るその青年は、ネットで評判の小説を読み、舞台となっている『ののや』と登場人物のモデルを見にやって来たと言います
一体誰が書いているのか?!
皆の驚きをよそに町に滞在する東山
しかし、まもなく胡散臭い探偵が町にやってきます
小さな食堂を舞台に、毎日をせいいっぱい生きる人々の絆とそこから巣立っていく真子の成長を描きます
経済的に恵まれているわけでもなく、特別な才能があるわけでも、飛びぬけて美しいわけでもない真子
故郷とそこに暮らす人たちは大切な存在ではあるけれど、反面、鬱陶しくて重く自分を縛る足枷にも重石にも感じてしまいます
大きく揺れる心を、奈央や、付き合うことになった幼馴染、親友、町の人たちに後押しされ、進路を決める真子
真子は、かんかん橋を渡って津雲を出ていくことも、帰ることもできます
帰ることのできる場所がある、待ってくれている人がいる
そんな故郷を持つ真子は自分の幸せを知り、旅立っていきます
人は帰る場所があるから、旅立つことができる
大金とは縁がない一生でも、仕事とご飯と家族と仲間と『ののや』でわいわい、十分十分
いつまでも、彼らが変わらずにいてくれたらと思います
描写がくどいと感じる箇所もありましたが、そこは軽く読み飛ばして
あさのさんの優しい思いが詰まった小説に読後は心地よい気持ちに包まれました
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