講談社文庫
2019年5月 第1刷発行
2020年11月 第12刷発行
535頁
塩田さん初読
小栗旬さん、星野源さん主演の映画を観て読んでみました
モチーフは1984年と1985年に大阪府と兵庫県を舞台に食品会社を標的とした一連の企業脅迫事件『グリコ・森永事件』です
登場人物以外、各事件の発生日時、犯人による脅迫状、挑戦状、事件報道は極力史実通りに再現したそうです
京都市内で父親から受け継いだテーラーを営む曽根俊也は2015年夏のある日、父の遺品の中からカセットテープと黒革のノートを見つけます
ノートには英文のメモや「ギンガ」「萬堂」の文字が…
テープを再生するとギン萬事件の脅迫犯の音声が流れ、俊也はこれは幼い頃の自分の声と確信します
父の代から親交のあった堀田に事情を打ち明けたところ、数日後、堀田が探してきた消息不明の俊也の伯父を知る人物と面会
その男はギン萬事件と伯父の関りをうかがわせるようなことを口にしました
一方、同じ頃、大日新聞大阪本社の記者、阿久津英士は、年末掲載予定のギンガ・萬堂事件の企画記事に応援要員として駆り出されていました
やがて俊也と阿久津は、互いの存在を知ることとなります
どこまでがフィクションで、どこまでがノンフィクションなのか
これこそがグリコ・森永事件事件の真実ではないか、と思えてきます
俊也と阿久津が事件を追う中に描かれる、事件に関わったことで人生を変えられてしまった人々の苦難にやるせなくなりました
事件の当事者として苦悩する俊也
俊也たちのことを記事にする阿久津
そして迎えるのは、少しだけ救いの見られるラスト
読み応えのある力作でした
グリコ・森永事件は覚えていますが、映画と小説に描かれたような詳しいことまでは知らなかった、のか忘れたのか
愛知県にも青酸入り菓子が置かれたのすら覚えていませんでした
あの事件以降、食品や目薬等、様々な品物の包装が変わりましたよね
キツネ目の男、今もどこかで生きているのかしら
「罪の声」タイトルが深いなと
フィクションでもなくノンフィクションでもない
映画でした。
原作も映画も良かったですね。
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