Puhdistus
訳・上野元美
2012年2月 初版発行
400頁
1992年
エストニアの小村に暮らすアリーダはソビエト統治時代の行いのせいで近隣から嫌がらせを受けながらも、家族の土地を守りながら細々と生活している
ある朝、彼女は庭に見知らぬ若い女が倒れているのを発見する
その女はエストニア語を話すロシア人で名前をザラといった
誰かから逃げているようだが、理由ははっきりしない
孤独なアリーダはザラを家に匿うことにする
1936年、アリーダと姉・インゲルの娘時代からザラが現れる1992年までを行きつ戻りつしながら物語は進みます
アリーダが、思いを寄せる姉の夫・ハンスとの暮らしを実現させるために必死に生きたソビエト統治時代のエストニア社会の様子
ウラジオストクで育ったザラが西側でお金を稼ぐため向かったドイツで騙され娼婦に成り下がった後、エストニアに辿り着くまでの経緯
そこにある、繰り返し繰り返し男社会と暴力に蹂躙された主人公たち女性の苦しみと諦めない強い思いがひしひしと伝わってきます
アリーダが、ザラが目の前に現れた理由を知った後の行動には、あの時代の自らの罪滅ぼしの意味もあったのでしょうか
エストニア
バルト三国の一国
人口34万人ほどの小国の歴史の大半は近隣諸外国の支配下にあり、近代以降もロシア革命を機に独立するも第二次大戦中1940年にソビエト連邦に占領され、1941年からの3年間はナチス・ドイツに、その後ふたたびソビエトによって占領/併合され、過酷を極めた統治により多くの政治家、軍幹部が処刑されたうえに数多くの市民がシベリアの収容所に送られた
再独立を果たすのはソ連崩壊後の1991年
こうした時代を背景に、静かな筆致で描かれた、素晴らしいけれど残酷な物語でした
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