講談社文庫
2008年12月 第1刷発行
2009年6月 第2刷発行
解説・末國善己
338頁
幕末の長崎、オランダの医官ポンペから実証的な西洋医学を、日本人として初めて学んだ松本良順
幕府の西洋医学所頭取を務め、新撰組に屯所の改築を勧め、会津藩で戦傷者の治療を指南、さらに榎本武揚に蝦夷行を誘われる
幕末、そして維新の波にもまれながらも信念を貫いた医家を描く歴史巨編
良順の生き様を通して、良順が交流を深めた新撰組の近藤勇、土方歳三や多くの外国人の人物像が浮かび上がってくるのと同時に、幕末・維新史に迫ることで、一般に思われているような佐幕派=悪という図式とは違う新しい歴史が見えてきます
維新後は幕臣だったにも関わらず異例の昇進を続け、軍医学の進歩に貢献するも家庭人としてはあまりよい晩年ではなかったようですね
それでも良順のご子孫は現在も医学者として活躍しておられるよし
先人の偉業を掘り起こし私たちに伝えてくれる吉村記録文学
歴史文学のような派手さや面白さには欠けるかもしれませんが一読の価値あり、です
吉村さんのような作家の存在は大きかったですね。
過去形なのが本当に残念です。