訳・田久保麻里
白水社
2013年 5月 発行
144頁
巻末エッセイ・いしいしんじ
舞台はヨーロッパの雪の多い山間の小さな町
病気で臥せっている父と夜こっそり家を留守にする母と暮す〈ぼく〉
養老院で老人の散歩の介助をして小遣いを貯めている彼はある日、古道具屋の鳥籠のトビに心を奪われます
トビを買い取るためには今ある貯金では足りず辛い仕事も引き受けることにします
毎晩、父の枕もとでトビの話をする〈ぼく〉
息子の話が嘘であることを察しながらも楽しそうに話を聞く父
大変な貧しさの中でその物語だけが父と息子を繋ぐ大切なものなのでした
雪がたくさん降った年、〈ぼく〉は様々なものを喪いますが、それは同時に記憶を心に刻み込み、幼年期に別れを告げる年にもなりました
生と死をめぐる美しい物語
ユベール・マンガレリの他の著書も近いうちに読みたいです
小川洋子さんの「静謐感」とも違う、もう少し物寂しさを含む「静寂感」が素晴らしく、とても美しい話でした。
現実からしばし離れたい時にピッタリな内容でした。そうそう、同じではないけれど小川洋子さんの世界観を思わせますね。
「しずかに流れるみどりの川」も積んであります。