みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0134「真実は闇の中」

2018-01-06 18:38:37 | ブログ短編

 お休みの朝。蘭子(らんこ)はコーヒーを飲みながら、今日は何をしようかと思いをめぐらせていた。そんな時、玄関(げんかん)のチャイムが鳴(な)り、良枝(よしえ)が尋(たず)ねてきた。良枝はドアを開けるなり、蘭子に平手打(ひらてう)ちをくらわせて言った。「どういうつもりよ! ひとの旦那(だんな)に手を出すなんて」
 蘭子は向かってくる良枝を何とか押(お)さえつけて、なだめるように言った。
「ねえ、落ち着いてよ。何のことか、あたしには分からないわ」
「とぼけても無駄(むだ)よ。ちゃんと、うちの人が白状(はくじょう)したんだから」
「ほんとに知らないわよ。あたしがそんなことするわけないでしょ」
 蘭子は良枝を突(つ)き飛ばした。良枝は悔(くや)しさが込み上げてきて、その場で泣き崩(くず)れた。
「言っとくけど、あたし、あなたの旦那に興味(きょうみ)なんかないわよ。何であたしが…」
「言ったのよ、寝言(ねごと)で。蘭子、蘭子って…」良枝は絞(しぼ)り出すように言った。
「寝言って何よ。そんなんで、あたしのこと浮気相手(うわきあいて)って思ったの?」
「違(ちが)うわよ。今朝、旦那を問(と)い詰(つ)めたら、付き合ってるって言ったの」
「それは…、あたしじゃないわ。ねえ、あなたたちを引き合わせたのはあたしよ」
 蘭子は良枝を優(やさ)しく抱(だ)き寄せて、ささやいた。「あたしは、あなたの味方(みかた)よ。信じて」
 蘭子の顔はあくまでも穏(おだ)やかだが、口元(くちもと)がわずかに微笑(ほほえ)んでいるようだった。
<つぶやき>人の気持ちは誰にも分かりません。本人でも、気づかないことありますから。
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