みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0148「鷺(さぎ)の恩返し」

2018-01-27 20:18:09 | ブログ短編

 ある日のこと。一人暮(ひとりぐ)らしのむさい男の部屋(へや)に、まっ白なワンピースに黄色い靴(くつ)を履(は)いた若い女が訪(たず)ねてきた。すらりと伸(の)びた足に均整(きんせい)のとれた体(からだ)つき、まだ幼(おさな)さが残(のこ)る顔だちは可憐(かれん)な花のようである。少女は男に言った。
「なにか困(こま)ってることはありませんか?」
「えっ?」男が驚(おどろ)くのも無理(むり)はない。彼がこんな美少女(びしょうじょ)と出会(であ)える機会(きかい)は皆無(かいむ)である。
「あたし…」少女はうつむき加減(かげん)で言った。「あなたのこと、助(たす)けたいんです」
「あの、どなたですか?」男はにやついた顔で彼女を見た。こんな娘(こ)と話せるなんて…。
「あたしのこと、覚(おぼ)えてませんか?」少女は寂(さび)しげな顔をみせたが、「そうですよね。あたし、こんな姿(すがた)だから…」
「いや…」男は必死(ひっし)に思い出そうとした。こんな可愛(かわい)い娘と会って忘(わす)れるはずがない。
「でも、いいんです」少女は愛くるしい笑顔で言った。「覚えてなくて当然(とうぜん)ですから」
「でも…。ごめんなさい」男はまったく思い出せない。「どこで会いました?」
「あの…、あたし、何でもしますから。恩返(おんがえ)ししたいんです」
「何でもって? それは、あの…」男の妄想(もうそう)は広がりつづける。
「とりあえず、欲(ほ)しいものを言ってください。すぐに買って来ますから」
 そう言って、少女は愛(あい)らしい手を差(さ)し出した。
<つぶやき>男性のみなさん。知らない美少女に話しかけられても、ついて行かないで。
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