みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0143「直球娘」

2018-01-20 18:40:45 | ブログ短編

 私は、何でも白黒(しろくろ)はっきりさせないと気がすまない性格(せいかく)だ。いつまでもグズグズと何も決められない人を見ていると、身体(からだ)がムズムズして口を出さずにはいられなくなる。おかげで、私の友だちはごくわずか…。でも、私はまったく気にしない。これが私なんだから。
 そんな私が、不覚(ふかく)にも恋をした。それも一目惚(ひとめぼ)れという、私の中で想像(そうぞう)すら出来(でき)ない状況(じょうきょう)におちいった。彼の前に出ると、いつもの私ではいられなくなってしまうのだ。
 私は、この心のザワザワを解消(かいしょう)すべく、彼に告白(こくはく)することにした。私は彼が現(あらわ)れるのを待(ま)った。彼の行動(こうどう)は把握(はあく)している。もうすぐ来てくれるはずだ。
 いつもの時刻(じこく)にドアが開き、彼がその姿(すがた)を現した。彼はいつもの席(せき)に座(すわ)り、私がそばに行くのを待っている。私は彼の前に水の入ったコップを置(お)く。彼はそこで言うのだ。
「ホットとモンブラン」何のためらいもなく、潔(いさぎよ)いその声に私はうっとりとしてしまう。
 いけないわ。ここよ、ここで言わないと。もうひとりの私が命令(めいれい)する。
「私と付き合って下さい」――言えた、言えたわよ、私。
 私は期待(きたい)を込(こ)めて彼を見つめる。彼はキョトンとして、「えっ、なに?」
「好きだって言ってるのよ。付き合うのか、付き合わないのかハッキリしろよ!」
 次の瞬間(しゅんかん)、私は後悔(こうかい)と恥(は)ずかしさで、顔をまっ赤にして逃(に)げ出した。私のほろ苦(にが)い恋の話――。どういうわけか、その彼は、私の横(よこ)で気持ちよさそうに寝息(ねいき)をたてている。
<つぶやき>彼女の信念(しんねん)はどんな時でも揺(ゆ)らがない。彼はそこに惚(ほ)れたのかもしれません。
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