あたしの夫(おっと)はしたがりのところがある。会社(かいしゃ)の若(わか)い女子社員たちが、「家事(かじ)をする男子っていいよね」と話しているのを聞いてしまって…。俺(おれ)も実(じつ)はやってるんだと言いたくなっちゃったようで…。でも、実際(じっさい)にやっていないと話しにならないので、家で突然(とつぜん)ガチャガチャとやり始めた。
別(べつ)にいいのよ。ちゃんとやってくれるんだったら、あたしもその方が助(たす)かるし。でも、彼のやり方は雑(ざつ)すぎて――。掃除(そうじ)をすれば部屋の中はめちゃくちゃになるし、勝手(かって)に洗濯(せんたく)をしてあたしのお気に入りの洋服(ようふく)をダメにしちゃうし…。言いたいことはいっぱいあるのよ。でも、彼のやる気を考(かんが)えて、あたしは優(やさ)しく、あくまでも優しくアドバイスをしてあげるの。なのに彼ったら、ぜんぜんあたしの話を聞こうともしない。
昨夜(ゆうべ)だってそうよ。後輩(こうはい)が弁当(べんとう)男子になって女子社員の注目(ちゅうもく)を集(あつ)めたからって、明日から俺も弁当男子になるって宣言(せんげん)しなくても――。あたしはイヤな予感(よかん)がしたわ。
今朝(けさ)、いつもの時間に目覚(めざ)めると、彼の姿(すがた)はベッドになかった。あたしは胸騒(むなさわ)ぎがして台所(だいどころ)に急(いそ)いだわ。そしたら、もうぐちゃぐちゃで…。あたしの予想(よそう)をはるかにこえた惨状(さんじょう)になっていた。なのに、彼ったらこう言うのよ。
「何か簡単(かんたん)なのでいいから、弁当のおかず作ってくれないか」
あたしは、あいた口がふさがらなかったわ。いったい何を作ろうとして、こんな状態(じょうたい)になったのよ。あたしは訊(き)きたいのをグッとこらえた。
<つぶやき>彼も悪気(わるぎ)はないんです。忍耐強(にんたいづよ)く、あきらめないで指導(しどう)していきましょう。
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