みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0437「不老長寿」

2019-01-16 18:31:47 | ブログ短編

 彼と一緒(いっしょ)に海釣(うみづ)りに出かけた。私はまだ初心者(しょしんしゃ)なのだが、彼の影響(えいきょう)で釣(つ)りが楽しくなりはじめていた。でも彼のこだわりがすごくて、うっとうしいくらい。私はいちいち指図(さしず)されるのが嫌(いや)で別の場所で釣りをすることにした。さすがに彼も心配(しんぱい)したみたいで、怒(おこ)って離(はな)れていく私に叫(さけ)んだ。
「岩場(いわば)は危(あぶ)ないから、あんまり遠(とお)くまで行くなよ! おい、聞いてんのか!」
 私に彼の忠告(ちゅうこく)を聞く余裕(よゆう)などなかった。どのくらい歩いただろう、とても景色(けしき)のいい場所に出た。ここなら、きっと大物(おおもの)が釣れるかも。私は何だか嬉(うれ)しくなった。近づいて行くと、岩場の陰(かげ)に人の姿(すがた)を見つけた。いかにも名人(めいじん)という感じのおじいさんで、真剣(しんけん)な表情(ひょうじょう)で釣り糸(いと)の先を見つめていた。私は恐(おそ)る恐る近づいて声をかけた。でも、おじいさんは気さくに答えてくれて、隣(となり)で釣りをしてもいいと言ってくれた。私はさっそく釣りを始めた。
 しばらくして、おじいさんの竿(さお)が大きく揺(ゆ)れた。そして、いとも簡単(かんたん)に大物を釣り上げてしまった。でも、おじいさんは魚から釣り針を外(はず)すと、そのまま海へ魚を投げ入れた。
 私は驚(おどろ)いて、「どうして逃(に)がしちゃうんですか? もったいないですよ」
 おじいさんはまた釣り糸を海に垂(た)らすと、「わしが狙(ねら)ってるのは人魚(にんぎょ)なんじゃよ」
「人魚?」私は自分の耳を疑(うたが)った。だって、人魚なんておとぎ話の――。
 おじいさんはにっこり微笑(ほほえ)むと、「人魚の肉(にく)を食うとな、不老長寿(ふろうちょうじゅ)になると言われてるんじゃ。わしは、もうここで百年ほど、こうして毎日釣りをしとるんじゃ」
<つぶやき>このおじいさんは人魚を食べたのでしょうか? それとも、海の妖怪(ようかい)なの!
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