数日間は何事(なにごと)もなく過(す)ぎていった。しずくもあの出来事(できごと)を忘(わす)れかけていた。そんな時だ。
「ねえ、私、変な動画(どうが)見つけちゃった」
水木涼(みずきりょう)が教室(きょうしつ)へ入るなり、しずくへ駆(か)け寄(よ)って言った。「ねえ、見て。これなんだけど」
スマホに映(うつ)された動画を見て、しずくは身体が震(ふる)えた。そこに映(うつ)っていたのは…。
「これって絶対(ぜったい)編集(へんしゅう)してあるよね。トラックの前に飛(と)び出した娘(こ)が突然(とつぜん)消えるんだよ」
涼が大声で騒(さわ)ぐので、教室にいたみんなが集まってきた。その中にいた川相初音(かわいはつね)が、
「この道(みち)って、何か、どっかで見たことあるような…。この近くじゃない?」
「違(ちが)うよ!」しずくは思わず叫(さけ)んだ。「絶対、違うと思う。この近くなんかじゃないわ」
そこに映っていた娘(こ)は、顔はぼかされていたが、紛(まぎ)れもなく、しずく自信(じしん)だった。何で…、どうして…。しずくの頭の中は混乱(こんらん)していた。そんなはずないわ。だって、あの場所で撮影(さつえい)していた人なんか…。
その時、またフラッシュバックのように映像(えいぞう)が蘇(よみがえ)ってきた。ゆっくりと視線(しせん)が動いていく。トラック、子供、そして街路樹(がいろじゅ)…。その木の陰(かげ)に黒い人影(ひとかげ)! しずくは息(いき)を呑(の)んだ。
「ねえ、もう一度見せてよ!」しずくは涼に急(せ)かした。涼は再生(さいせい)ボタンを押(お)す。
でも再生するどころか、突然(とつぜん)スマホの画面がパッと消えてしまった。涼は慌(あわ)ててスイッチを押してみるが、全(まった)く反応(はんのう)しない。「やだ、何で…、壊(こわ)れちゃったの?」
<つぶやき>誰(だれ)が何のために撮影(さつえい)したのでしょうか。しずくの周(まわ)りで何かが始まろうと…。
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