僕(ぼく)は格安(かくやす)のアパートを見つけた。今どき、この広(ひろ)さでこの家賃(やちん)は見つからないだろう。それに駅(えき)にも近いときている。そのことを友だちに話すと、それって事故物件(じこぶっけん)じゃないのかと、止(や)めるように言われた。でも、この安さは…。僕は、引っ越しを決意(けつい)した。
引っ越しを終(お)えて翌日(よくじつ)、僕はすがすがしく目を覚ました。洗面所(せんめんじょ)で顔を洗って、ふと目の前の鏡(かがみ)を見ると、そこに…若(わか)い女性が写(うつ)っていた。僕は、はっとして振(ふ)り返った。僕の後ろには…誰(だれ)もいない。鏡を見ると…僕の姿(すがた)があるだけだ。今のは…何だったんだ?
――仕事(しごと)から帰って部屋(へや)に入ると、若い女性が…朝、鏡に写っていた女性が部屋の真ん中に座(すわ)っていた。僕に気づくと、その女性はテレビを指(ゆび)さして何かを訴(うった)えかけている。僕がテレビのスイッチを入れると、その女性は嬉(うれ)しそうに笑(わら)ってテレビに見入(みい)った。
こ、これは、いわゆる幽霊(ゆうれい)ってヤツなのか? それにしても、リアルすぎる。普通(ふつう)の人間(にんげん)と変わらないじゃないか…。僕は、どうしたものかと考(かんが)えた。こうなったら、なれるしかない。若い女性の…同居人(どうきょにん)がいると思えば……。
寝(ね)る時間になって、僕はベッドを見た。すると、いつの間(ま)にかそこに彼女が眠(ねむ)っていた。僕の気配(けはい)を感じたのか、彼女は身体(からだ)をずらして僕の場所(ばしょ)を空(あ)けてくれた。僕は、そっと布団(ふとん)に入る。でも、あまりの冷(つめ)たさに、僕は身震(みぶる)いが止(と)まらなくなった。
<つぶやき>こんなとこ絶対(ぜったい)に住(す)めません。でも、幽霊も普通に寝ることってあるのかな?
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