みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1097「暇な探偵」

2021-07-16 17:41:24 | ブログ短編

 ここ一ヶ月、まったく依頼(いらい)が来ない探偵事務所(たんていじむしょ)。探偵は暇(ひま)を持て余(あま)しているようだ。そこへ、助手(じょしゅ)が駆(か)け込んでくる。町内(ちょうない)を回って営業(えいぎょう)していたようだ。
「先生(せんせい)、依頼がありましたよ。すぐに行ってください」
 探偵は目を輝(かがや)かせて、「そうか。どんな依頼だ? 殺人事件(さつじんじけん)か、それとも大泥棒(おおどろぼう)でも…」
「そんな、小説(しょうせつ)じゃないんだから、そんな依頼がくるわけないでしょ」
「じゃあ、素行調査(そこうちょうさ)か、それとも人捜(ひとさが)し…。いや、浮気(うわき)調査だな?」
「違(ちが)いますよ。もっと身近(みぢか)なやつです」
「えっ、じゃあ…まさか…。ペットを探(さが)せってやつか? それは…君(きみ)がやってくれよ」
「違いますよ。依頼人は商店街(しょうてんがい)の八百屋(やおや)の大将(たいしょう)です。ちょっと手伝(てつだ)ってほしいって…」
「八百屋? 何だそれは…。俺(おれ)は探偵だぞ。それも名探偵だ。店番(みせばん)なんかできるかよ」
「店番じゃないですよ。配達(はいたつ)を頼(たの)みたいって…」
「他(ほか)をあたってくれよ。そんなの、探偵のやることじゃないだろ?」
「でも、配達先(さき)が…問題(もんだい)なんですよ。その住所(じゅうしょ)、調(しら)べてみたら墓地(ぼち)だったんです」
 探偵は椅子(いす)から飛(と)び上がるように立ち上がると、「やめろ…。それは…、ダメだろ。断(ことわ)ってくれ。俺は…俺は、人間(にんげん)しか相手(あいて)にしないんだ」
「恐(こわ)いんですか? これを解決(かいけつ)したら、商店街の他の店からも依頼がくるかもですよ」
<つぶやき>助手にとって仕事(しごと)がないと死活(しかつ)問題ですよね。さて、真相(しんそう)はどうなんでしょ。
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