みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1098「分身ロボ」

2021-07-18 17:51:08 | ブログ短編

 僕(ぼく)はネット通販(つうはん)で分身(ぶんしん)ロボットを購入(こうにゅう)した。学生(がくせい)の僕にとっては三万円は痛(いた)かったが、こいつはきっとそれ以上(いじょう)の働(はたら)きをしてくれるはずだ。
 僕は大きなケースの蓋(ふた)を開けた。そしてロボットのスイッチを入れる。すると、ロボットの目が光り僕をスキャンしたようだ。しばらくすると、ロボットの容姿(ようし)が僕とそっくりになった。これには、僕も驚(おどろ)いた。こんなに同じ顔になるなんて――。これなら、友だちにも見分(みわ)けがつかないだろう。
 ロボットは期待(きたい)どおりの働きをしてくれた。学校(がっこう)の試験(しけん)は完璧(かんぺき)で、優秀(ゆうしゅう)な成績(せいせき)で卒業(そつぎょう)できた。そして、就職活動(しゅうしょくかつどう)もこいつのおかげで一流企業(いちりゅうきぎょう)に入ることができた。これからは、こいつに仕事(しごと)をさせて、僕はのんびり遊(あそ)んで暮(く)らすことができるはずだ。
 ある朝、目覚(めざ)めると――。僕は、狭(せま)いケースの中に押(お)し込まれていた。これはいったい、どういうことだ。僕は、ケースを叩(たた)いて助(たす)けを求(もと)めた。いくら声を張(は)り上げても助けは来ない。どうやら、トラックで運(はこ)ばれているようだ。――どのくらいたったろう。目的地(もくてきち)に着(つ)いたようだ。トラックの扉(とびら)が開く音がした。誰(だれ)かが、ケースを動かした。僕は、必死(ひっし)に声を張り上げて、ケースを叩いた。すると、人の声がした。
「おい、中で起動(きどう)してるぞ。ちゃんと電源(でんげん)を切(き)ってなかったのかな?」
「まあ、いいさ。故障(こしょう)で戻(もど)って来たヤツだから、どうせこのまま廃棄処分(はいきしょぶん)されるんだ」
<つぶやき>あら、どうなっちゃうの? 楽(らく)ばかりしてるから、こんなことになるんだぞ。
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コメント
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