大きな鳥(とり)かごのようなものの中に若(わか)い女性が入れられていた。そこへ、彼女の名前(なまえ)を呼(よ)びながら若い男がやって来る。彼は、彼女を助け出そうとするが扉(とびら)が見つからない。今度は、白衣(はくい)を着た男が出てきて言った。
「お前だな。こいつに寄生(きせい)しているのは。さぁ、正体(しょうたい)をあらわすんだ」
彼女が声をあげた。「あの、先生(せんせい)…。この人は…彼なんです。あたしたち、付き合って…」
白衣の男は、「さあ、答(こた)えるんだ。こいつから搾取(さくしゅ)してるだろ? 正直(しょうじき)に答えろ!」
「俺(おれ)は、彼女の恋人(こいびと)なんだ。何も、彼女からもらってなんか…」
彼女が口を挟(はさ)んだ。「えっ? それ、違(ちが)うよね。この間(あいだ)、お金(かね)、貸(か)したじゃない」
「ああ…、あれは…。返(かえ)すよ。今度、返すつもりでいたんだ」
「じゃあ、二か月前に貸したのも、一緒(いっしょ)に返してくれる?」
「えっ? それは…。えっ、そんなこと…あったか? いや、覚(おぼ)えてないけど…」
「はぁ? なに言ってるの。他(ほか)にも、うちに来たとき、あたしの財布(さいふ)から抜(ぬ)き取って…」
「いや、それは…。何だよ…、俺たち、恋人同士(どうし)だろ。それくらい…別(べつ)に…」
彼は、大粒(おおつぶ)の汗(あせ)をかきはじめた。汗はダラダラと流れ落ち、彼の顔が崩(くず)れ始めた。どんどん人間(にんげん)ではないものに変形(へんけい)していく。そして、二人の前から逃(に)げ出してしまった。
白衣の男は呟(つぶや)いた。「まったく、まともな男を見つけられないのか?」
彼女は怒った顔で、「何で捕(つか)まえてくれなかったんですか? あたしのお金が……」
<つぶやき>これもある意味(いみ)、寄生ってことですかね。いったい何の実験をしてたのか?
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