みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0446「パンドラの箱」

2019-01-26 18:29:55 | ブログ短編

 ある日のこと、夫(おっと)が段(だん)ボール箱を大事(だいじ)そうにかかえながら帰って来た。夫が言うには、
「パンドラの箱(はこ)を手に入れたんだ。これは世界に一つしかない珍品(ちんぴん)なんだ」
 夫はネットオークションで見つけたらしく、会社へ届(とど)いたという。夫が段ボール箱を開けると、中から出て来たのは薄汚(うすよご)れたただの木箱(きばこ)。どう見てもパンドラの箱とは思えない。
 妻(つま)は呆(あき)れた顔で夫に訊(き)いた。「ねえ、そんなのいくらで買ったのよ?」
「十万だよ。ギリシャ神話(しんわ)では、この中にあらゆる悪(あく)と災(わざわ)いが詰(つ)まってたんだ。でもな、今この箱の中に残(のこ)っているのは希望(きぼう)なんだって。知ってたか?」
「そんなこと知らないわよ。あなた、そんなお金どうしたのよ?」
 夫は妻の質問(しつもん)も耳(みみ)に入らないのか、大きなため息(いき)をついた。
「見てみろよ。錠(じょう)が掛(か)かってる。これは開けるなってことだよ。きっとそうだ」
 それから数日後、夫は思い悩(なや)んだ顔で帰って来た。そして妻に切り出した。
「なあ、鍵(かぎ)を見つけたんだ。これは、やっぱり手に入れておいた方がいいかな?」
 妻は不安(ふあん)にかられながら訊いた。「何の話よ。ちゃんと分かるように言って」
「パンドラの箱の鍵が、オークションに出てるんだ。百万なんだけど買ってもいいか?」
 妻は目をつり上げて言った。「そんなことしたら、そく離婚(りこん)だからね。分かった!」
<つぶやき>これはまさにパンドラの箱の災いなのかもしれません。開けちゃだめだよ。
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0445「しずく4~動画」

2019-01-25 18:34:49 | ブログ連載~しずく

 数日間は何事(なにごと)もなく過(す)ぎていった。しずくもあの出来事(できごと)を忘(わす)れかけていた。そんな時だ。
「ねえ、私、変な動画(どうが)見つけちゃった」
 水木涼(みずきりょう)が教室(きょうしつ)へ入るなり、しずくへ駆(か)け寄(よ)って言った。「ねえ、見て。これなんだけど」
 スマホに映(うつ)された動画を見て、しずくは身体が震(ふる)えた。そこに映(うつ)っていたのは…。
「これって絶対(ぜったい)編集(へんしゅう)してあるよね。トラックの前に飛(と)び出した娘(こ)が突然(とつぜん)消えるんだよ」
 涼が大声で騒(さわ)ぐので、教室にいたみんなが集まってきた。その中にいた川相初音(かわいはつね)が、
「この道(みち)って、何か、どっかで見たことあるような…。この近くじゃない?」
「違(ちが)うよ!」しずくは思わず叫(さけ)んだ。「絶対、違うと思う。この近くなんかじゃないわ」
 そこに映っていた娘(こ)は、顔はぼかされていたが、紛(まぎ)れもなく、しずく自信(じしん)だった。何で…、どうして…。しずくの頭の中は混乱(こんらん)していた。そんなはずないわ。だって、あの場所で撮影(さつえい)していた人なんか…。
 その時、またフラッシュバックのように映像(えいぞう)が蘇(よみがえ)ってきた。ゆっくりと視線(しせん)が動いていく。トラック、子供、そして街路樹(がいろじゅ)…。その木の陰(かげ)に黒い人影(ひとかげ)! しずくは息(いき)を呑(の)んだ。
「ねえ、もう一度見せてよ!」しずくは涼に急(せ)かした。涼は再生(さいせい)ボタンを押(お)す。
 でも再生するどころか、突然(とつぜん)スマホの画面がパッと消えてしまった。涼は慌(あわ)ててスイッチを押してみるが、全(まった)く反応(はんのう)しない。「やだ、何で…、壊(こわ)れちゃったの?」
<つぶやき>誰(だれ)が何のために撮影(さつえい)したのでしょうか。しずくの周(まわ)りで何かが始まろうと…。
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0444「恋に落ちる」

2019-01-23 18:29:12 | ブログ短編

 講義(こうぎ)が終わると一人の生徒(せいと)が教授(きょうじゅ)に駆(か)け寄り質問(しつもん)した。
「なぜ人は恋(こい)をするんでしょう?」
 教授(きょうじゅ)は首(くび)を傾(かし)げて考えていたが、「生物学的(せいぶつがくてき)にいえば、子孫(しそん)を残(のこ)すためじゃないのか」
「じゃあ、どんなオスでも構(かま)わないってことですよね」
「それは違(ちが)うな。より強(つよ)いもの、賢(かしこ)いものを選(えら)んでいる。要(よう)するに、生きるために必要(ひつよう)なあらゆる要素(ようそ)に秀(ひい)でたオスを選ぶように進化(しんか)している。オスからいえば、体(からだ)を大きく見せたり、美しく着飾(きかざ)ったりして、メスを振(ふ)り向かせようと――」
 生徒は教授の顔を見つめて言った。「教授は、人を好きにならないんですか?」
 教授は唐突(とうとつ)な質問に思考(しこう)が停止(ていし)したようだ。生徒は構(かま)わずに、
「だって、教授はいつも同じ服(ふく)を着てるし、自分を良く見せようとしないじゃないですか」
「私は、そういうことには……。君(きみ)は、なぜそんな質問をするんだね?」
「あたし、何か、恋をしちゃったみたいなんです」
「…そうかね。それは、良かった。まあ、頑張(がんば)りたまえ」
「教授は独身(どくしん)ですよね。あたしの恋の相手(あいて)、知りたくありません?」
「……。私は、恋をしている時間が無(な)いんだ。他にやることがいっぱいあってね。それに、私は高いことろが苦手(にがて)だ。だから、恋には不向(ふむ)きなんだ。失礼(しつれい)するよ」
<つぶやき>教授は、ほろ苦(にが)い恋をしたことがあるのかもね。恋に理屈(りくつ)は必要ないです。
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0443「さゆりちゃん」

2019-01-22 19:33:26 | ブログ短編

 僕(ぼく)はさゆりちゃんのことが好きだった。あんな清楚(せいそ)で純真(じゅんしん)な女の子は見たことがない。でも僕には告白(こくはく)する勇気(ゆうき)はない。もし嫌(きら)われたら、そう思っただけで足がすくんでしまう。
 ある日のこと、僕はさゆりちゃんに呼(よ)び出された。誰(だれ)もいない理科(りか)準備室(じゅんびしつ)へ入って行くと、さゆりちゃんは僕の顔を見て微笑(ほほえ)んだ。僕は身体(からだ)がゾクゾクっとふるえた。
「ねえ、私のこと好きだよね。私、知ってるのよ」さゆりちゃんは僕の手を取り、ゆっくりと自分の方へ引き寄(よ)せて、「いらっしゃい。あなたのしたいこと全部(ぜんぶ)かなえてあげる」
 さゆりちゃんの顔が目の前に迫(せま)ってきた。でも、僕はふんばった。だって、さゆりちゃんはこんなことする娘(こ)じゃあない。僕はさゆりちゃんの手を振(ふ)り払い、
「君(きみ)は誰(だれ)だ! 僕のさゆりちゃんは、こんなこと絶対(ぜったい)しない!」
 その時だ。同じクラスの伊藤(いとう)が入って来た。さゆりちゃんは、さっきと同じことを伊藤に言った。伊藤は何のためらいもなく、さゆりちゃんを抱(だ)きしめた。僕は愕然(がくぜん)とした。こんなことって…。さゆりちゃんは唇(くちびる)を突(つ)き出した。伊藤の口がさゆりちゃんの口へ――。
 それは一瞬(いっしゅん)だった。大きな魚(さかな)が小魚(こざかな)を飲(の)み込むように、伊藤の身体がさゆりちゃんの口の中へ吸(す)い込まれていった。僕は、僕は……。
「ねえ、起(お)きてよ! 今日は早く出かけるって言ったでしょ」
 僕は妻(つま)の声で目を覚(さ)ました。「ごめん、さゆり…。すぐ行くから」
「ほんとグズね。早く朝食(ちょうしょく)を作ってよ。もう時間が無(な)いんだから」
<つぶやき>これは夢(ゆめ)? 何か、すごくストレスがたまってるかも。無理(むり)しちゃダメだよ。
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0442「手なずける」

2019-01-21 18:35:34 | ブログ短編

 パパとママは些細(ささい)なことから喧嘩(けんか)をしてしまった。お互(たが)いに意地(いじ)を張(は)って、引くに引けない状態(じょうたい)に。今さら謝(あやま)りたくないパパは、息子(むすこ)を使って無(な)かったことにしようと…。
「でもパパ、僕(ぼく)にそんなことを頼(たの)むってことは、それなりに見返(みかえ)りがあるってことだよね」
 小学生の息子は抜(ぬ)け目がなかった。パパは驚(おどろ)いた顔で、
「お前、よくそんなこと知ってるな。どこで覚(おぼ)えたんだよ」
「これぐらい常識(じょうしき)だよ。誰(だれ)だって知ってることさ。それより、どうなの?」
「じゃあ…、今度の休みにどっか、遊(あそ)びに連れてってやるよ。どこがいい?」
 息子はしばらく考えていたが、「でもなぁ、パパにそれだけの経済的(けいざいてき)余裕(よゆう)があるとは思えないよ。それだったら、ママに付いた方が絶対(ぜったい)良いと思うんだけど」
「なに言ってんだよ。ここはな、男同士(どうし)で結束(けっそく)しないと。お互(たが)い、こう助(たす)け合ってだな…」
「分かった。ちょっと考えさせて。心配(しんぱい)しなくてもいいよ。今の話は内緒(ないしょ)にしとくから」
「何を考えるんだよ。お前だって、パパとママが喧嘩してちゃ嫌(いや)だろ。早く仲直(なかなお)りして…」
「まあ、そうだけど。じゃあ、ちょっと待ってて。さっきママに呼(よ)ばれたんだ。僕、行かなきゃ。きっとママも同じこと考えてるんじゃないかなぁ。でも、心配しないで。もし離婚(りこん)ってことになっても、僕はいつまでもパパの子供(こども)だから」
<つぶやき>手なずけられてるのはどっちかな? 家族(かぞく)は仲(なか)が良いのが一番だと思います。
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